●教育工学 きょういくこうがく
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教育目標の効果的達成を意図して,教育実践と教育経営にかかわる諸要因を分析・構成・制御・評価などをすることによって,教育課題の解決を実証的・実践的に解明する研究分野を意味する。【アメリカの教育工学】アメリカにおいて,Educational Technologyの用語が使用されだしたのは,1960年代に入ってからである。したがって,そのころから教育工学が教育研究において重要な役割を果たしてきたといえる。その背景としては,次のことが指摘できる。[1]スプートニク=ショックをきっかけに,アメリカにおける教育の現代化が実施された。そのため,諸科学の成果を踏まえた新しい教科のカリキュラム・教授方略・教授メディアなどが,教育工学の手法によってシステム的に開発されてきた。[2]観察可能で客観的に把握できる人間行動を研究する行動科学および情報の伝達・変換・記憶・処理などを学際的に研究する情報科学が発展してきた。そのため,従来の思弁的教育研究ではなく,人間行動の予測と制御によって人間行動の変容を意図する教育工学の基礎づけがなされた。また,研究方法においては,数量化理論・ゲーム理論・シミュレーション理論・コミュニケーション理論などの利用がなされてきた。[3]電子工学などの科学技術が進歩し,それらの機器が教育分野にも進出してきた。そのため,テレビ・テープレコーダー・OHP・ビデオ・アナライザー・コンピュータなどが,教育現場で利用されだし,それらの効果的利用が求められた。その後,アメリカにおける教育工学では,科学技術の進歩によって開発されてきた教育機器などを利用して,教授・学習過程を改善していく傾向と,情報科学や行動科学などの成果を踏まえながら教授・学習過程を科学的に制御していく傾向が,おもな研究の流れとなった。そして,今日では,そのような傾向を受け継ぎながらも,教育の営みをひとつのシステムとしてとらえ,それを有効に機能させるために教授,学習過程の設計・実施・評価のシステム的研究を基盤に,学校教育の教育課程や教育経営をも含めた教育工学へと発展してきている。
【日本の教育工学】わが国において教育工学の分野が台頭してきたのは,1967年(昭和42)に日本視聴覚教育学会や日本教育学会で教育工学に関するテーマが取り上げられてからである。その後,研究面では,1968年(昭和43)に科学研究費による研究助成が開始され,1971年(昭和46)には教育工学センターが,北海道教育大学・東京学芸大学・愛知教育大学・福岡教育大学に創設された。それをきっかけに,全国の国立大学にも,毎年数大学ずつ教育工学に関連する研究施設が増えてきている。また,学校教育の現場では,1969年(昭和44)の中学校における教育機器利用研究指定校の設定をきっかけに,小学校・高校においても教育機器利用研究がひろまってきた。このような研究と実践の成果を背景に,1977年(昭和52)にはこれまでの教育工学の集大成として,『教育工学の新しい展開』が出版された。本書では,わが国における教育工学の理論的・実践的研究の概況について次のように指摘している。〈[1]教育工学を単なる教育機器利用ではなく,教育におけるシステム的アプローチであるとする考え方の定着,[2]教授学習過程や教育経営における設計・実施・評価に関する研究の充実,[3]教育メディアの開発と利用,[4]電気通信手段の多様な利用研究,[5]義務教育段階における実践研究から教員養成・大学教育・特殊教育などへの実践研究の拡大。今後は,このような研究方向での研究実績を生み出していくとともに,研究対象の拡大と新しい方法論や手法によって,教育工学は教育実践を現実に変革する教育研究として,学校教育の分野だけでなく,他の教育の分野においても,重要な役割を果たしていくと考えられる。
〔参考文献〕堀内敏夫,田中正吾総監修『実技講座−教育工学の実践』全6巻,1975,学習研究社
教育工学研究成果刊行委員会(代表大塚明郎)編『教育工学の新しい展開』1977,第一法規出版