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●旧約聖書 きゅうやくせいしょ

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 本来,前10世紀ごろから前1世紀のあいだに書かれたイスラエル・ユダヤの文献のうち,ユダヤ教の聖典としてまとめられたもの。キリスト教もこれを聖典の一部として採用し,新約聖書に対して旧約聖書と呼んだ。旧約聖書の原本であるヘブライ語聖典は紀元1世紀末ごろ最終的に決定され,39の文書にまとめられた。旧約聖書は三つの部分より構成されている。すなわち第1は律法(トーラー)で,旧約聖書冒頭の5書(創世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記)の総称で,この律法の起源はモーゼがヤーヴェ神から授けられたものとされているが,実際は前10世紀ごろ以来,現代の学者がヤーヴェ資料(J)・エロヒム資料(E)・申命記資料(D)・祭司法典(P)と呼ぶ資料などが幾度か編集されて現存の形態をとるようになった。第2は預言(ナビーム)で,このなかに実際は歴史書(ヨシュア記・士師記・サムエル記〔上と下〕・列王記〔上と下〕)である前の預言書と本来の預言書である後の預言書(イザヤ書・エレミヤ書・エゼキエル書および12小預言書すなわちアモス書・ホセア書・ミカ書・ナホム書・ゼパニヤ書・ハバクク書・オバデヤ書・ハガイ書・ゼカリヤ書・マラキ書・ヨエル書・ヨナ書)が含まれている。第3は諸書(ケスビーム)または聖文集と呼ばれるもので,律法や預言に比べると一段低いものと考えられている。ヘブライ語原典の順序では詩篇・ヨブ記・箴言・雅歌・ルツ記・哀歌・伝道の書・エステル記・ダニエル書・エズラ記・ネヘミヤ記・歴代志〔上と下〕であるが,現代語訳(日本語訳を含めて)の順序は前3〜前2世紀ごろエジプトのアレクサンドリアでつくられたギリシア語『七十人訳聖書(セプテュアギンタ)』にならって,律法・諸書・預書(ダニエル書が預言書としてエゼキエル書の次に配置換え)の順になっている。

【内容】創世記は天地創造と人間の創造と堕落・大洪水など古代オリエントの伝承に依拠しながらヤーヴェ神の強力な主権と指導が強調され,アブラハムにはじまる族長物語とヨゼフ物語に受け継がれる。出エジプト記はイスラエルの民がモーゼに率いられてエジプトを脱出し,紅海の奇跡をへてシナイ山でモーゼが「十戒」を含む律法を授与される歴史を記し,レビ記・民数記・申命記はこれを補足する律法の諸規定とモーゼの死にいたるまでの歴史を記している。モーゼの死後,神はヨシュアを選び約束の地カナーンへの侵入と占領・定住の指揮をとらせ,イスラエル12部族は住むべき土地の分配を受けた(「ヨシュア記」)。しかしイスラエル人のなかにカナーンの宗教・祭儀が混入し,神は懲罰の道具として周辺民族を用い,イスラエル人を苦しめる一方,イスラエル人が神に救いを求めると士師(救助者)を送って彼らを救った(「士師記」)。士師サムエルの時代には〈海の民〉ペリシテ人という強力な敵がイスラエルを苦しめ,人々はこれと対抗するため強力な王を戴くことを望んだ。民に乞われてサムエルは王としてサウルを選び,イスラエルは王政に移り,ダビデ・ソロモンの全盛期を迎えた(サムエル記)。ソロモンの死後王国は南北に分裂,歴代の王は神に背き,北王国イスラエルの滅亡(721)をへて南王国ユダの終末(586)とバビロン捕囚にいたる(列王記)。本来の預言書のうちイザヤ書は鋭い政治・社会・宗教批判を投げかけ,第2イザヤ書(40〜55章)は絶対神による救済のドラマを告知する。ユダ滅亡期の苦難の預言者「エレミヤ」,バビロン捕囚期「エゼキエル」の書は「イザヤ書」とともに旧約思想のピークを形成する。12小預言書にも小粒とはいえ,それぞれに個性的な神の言が語られる。詩篇は敬虔な宗教詩,人生の苦難の問題と対決した「ヨブ記」,知恵文学を構成する「箴言」,「信道の書」,篤信の婦人の記録としての「ルツ記」,「エステル書」,清純な恋愛詩の「雅歌」,エレミア作とされたイェルサレム滅亡の「哀歌」,シリア王アンティオコス4世の迫害を背景とする黙示文学「ダニエル書」,ユダヤ教成立期の史書「エズラ」と「ネヘミヤ」,イスラエルの通史で最後に正典として公認されたのが「歴代志」である。

〔参考文献〕石田友雄ほか『総説旧約聖書』1984,日本基督教団出版局

木田献一ほか『聖書の世界 総解説』1984,自由国民社