●奇跡 きせき
AD
既知の自然法則を超越した現象で,宗教的真理の徴(しるし)とみなされるもの。イスラームでは,[1]ムハンマドが行った奇跡(ムージザ),[2]神秘主義の聖者が行う奇跡(カラーマ)がある。コーランやハディース(伝承)には,ムハンマドに関する奇跡が記されているが,それはムハンマドの預言性を証明するものである。一方,聖者の行う奇跡は,神が彼にあたえた恩寵のことで,人の心を読みとること,水の上を歩行できること,病気をなおすことなど,聖者はさまざまな奇跡を行う。この奇跡の実践によって,人々は聖者に対する畏敬の念を深め,その結果,イスラームに改宗することにもなった。本来,聖者は奇跡を修業の目的とすることを邪道とした。聖者にとっては,信仰の深まりが問題であり,そこに神の恩寵である奇跡をみい出そうとした。このような奇跡を実践しうる超人的能力をバラカといい,聖者の死後もバラカは墓石などに残ると信じられている。