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●漢方 かんぽう

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 中国から伝来し,日本で独自の発展をした医術で,西洋医学に対していう。日本に伝わってきたのは5世紀のころで,明治維新までは日本の医学のすべてをおおうか,主流であった。中国ではいまなお漢方が盛んであり,日本でも,西洋医学の欠陥を埋めるため,漢方を再評価する風潮もある。漢方薬を中心にして,鍼(はり)や灸が使われ,西洋医学が人間各部位に合わせて専門化されているのに比べて,人間を,精神と合わせて全体としてとらえるのが特徴である。中国における最古の医書は,「内経」(だいけい)であり,これは『素問』と『霊枢』の二書よりなる。後漢の『傷寒論』,隋の『諸病源候論』,唐の『千金方』などが付け加わり,漢方の基礎ができた。薬については,明の『本草綱目』が代表的な書物である。煎じ薬・生薬などが,本来の漢方では一種だけの薬を使わず,患者の症状に即して処方し,さらにその結果を診断して次の薬を投じていく。4種から8種,ときには数十種が混ぜ含わされる。診断を「証」と呼び,自覚症状と他覚症状を合わせて治療法を決めた。中国の漢方の背景をなす哲学は,万物を相反する2要素で認識する陰陽説と,万象を五要素で論証する五行説である。

漢方薬】中国では中葯(ちゅうちゃく)と呼ぶ。日本に入ってきて漢方薬となるが,民間伝承で使用される薬とは,前者が漢方学に則った薬であることから区別される。常用する薬の数は中国では500種に及び,日本では『傷寒論』によって200種ぐらいが使用された。植物性の薬が大半を占め,動物性・鉱物性のものは少ない。ほとんどを煎剤として使用した散剤・軟膏・硬膏といわれる膏剤,蜜や糊でかためた丸剤などの種類がある。具体的に効能と薬名をいくつかあげると下剤としては,有名な大黄(だいおう)を初め,芒消(ぼうしょう)・巴豆(はず)・桃花(とうか)など。解熱剤として,柴胡(さいこ)・石膏・竹葉(ちくよう),利尿剤として茯苓(ぶくりょう)・求(じゅつ)・猪苓(ちょれい)など。消化整腸剤として,芍薬(しゃくやく)・橘皮(きっぴ)・縮砂(しゅくしゃ)・茴香(ういきょう)などで,なかにはよく知られたものもある。漢方の診断においては発熱するかどうかで,陽病と陰病に大きく二つに分け,痛む場所が頭か胸か腹部かによって,陽病のうちが太陽病と少陽病と陽明病の三つに分けられる。熱がなければ,太陰病か少陰病か厥陰(けっちん)病である。これを漢方の三陰三陽と呼び,それぞれにおいてどの薬を使用するかが決められている。発熱を伴い頭痛のする風邪は太陽病で,熱もないのに頭痛がするのは,たとえ風邪でも太陰病として,薬の種類が区別される。太陽病によく効く薬は,桂枝湯(けいしとう)・麻黄湯(まおうとう)・葛根湯(かっこんとう)・大青竜湯(だいせいりゅうとう)などであり,太陰病に効くのは,桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や桂枝加大黄湯(けいしかだいおうとう)などである。漢方の診断は,日本では腹診を主として行うが,原則的には四診というのがある。医師が耳と鼻を使って診断する聞診が一つ,ついで脈診と腹診,四つ目は顔色・爪・舌を観る望診である。その四診でもって処方を決め,症状に応じて薬物の配合を考える。単味(1種類)で与えることを避けるのは,薬物に対する習慣性を発生させないことや副作用を防ぐことに役立っている。与えられた煎じ薬は,1日分を20倍の水に入れて,土瓶や鍋に入れて熱し,45分間沸騰させる。滓(かす)を取って置いておき,3回に分けて食前に服用するのが一般的である。粉末剤の場合は白湯にて服用し,子どもはそれぞれ大人の何分の一かが決められている。病名がきめかねる場合でも使用でき,副作用のないことも漢方薬の長所で,このため明治に西洋医学にとってかわられ,すっかり衰徴していたのだが,再評価されている。ただ天然に産する草木が原料なので入手が難しくなった種類もある。