●感染呪術 かんせんじゅじゅつ
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【定義】イギリスの人類学者フレーザーの用語。フレーザーは呪術的思考を考察し,それが“共感の法則”にもとづくものであり,したがって,呪術は“共感呪術(Sympathetic Magic)”と呼ぶことができると論じた。共感呪術は,さらに,類似の法則にもとづく“類感呪術(Homoeopathic Magic)”と接触あるいは感染の法則にもとづく“感染呪術”との二つに分けられる。ここで接触あるいは感染の法則とは,〈かつてたがいに接触していたものは,物理的接触のやんだ後までも,なお空間を距てて相互作用を継続する〉という思考原理によるものである。フレーザーによれば,この法則は類似の法則と同様に科学的認識とは異なった“誤まった”観念連合の所産とされている。なお,実際には,特定の呪術のなかにこの二つの法則が共存している場合もある。とくに,単独で現れがちな類感呪術に対し,感染呪術は一般に類似の法則・模倣の原理をも含むことが多い。【感染呪術の具体例】フレーザーは大著『金枝篇(The Golden Bough)』のなかで,多くの感染呪術の例をあげている。そのいくつかを紹介しておこう。[1]オーストラリアのダーリング河畔のある部族では,成年式のときに抜かれた少年の歯は,水辺にはえている木の樹皮のなかに置かれる。樹皮が成長して歯をつつみかくしたり,歯が水中に落ちたりしたら良いが,もしそれが露出して蟻がたかったりした場合には,その少年に影響が及び,彼の口中は病気になるといわれている。[2]ポナペ島の新生児のヘソノオは貝殻に入れられ,両親がその子に託す期待にしたがって適当な処置がなされる。たとえば,木登りに巧みになることを望むときには,樹の枝にかけておく。[3]イングランド東部では,鎌で怪我をした者は,その刃を研ぎ油を塗る。傷をつけた刃と傷口とが神秘的影響を及ぼしあうと信じているからであり,塗油も傷の化膿を防ぐためである。[4]プロシアでは,盗人が逃亡する際に残していった衣類を激しくたたくと,盗人は病気になると思われている。これも衣服とかつてそれを身につけていた所有著との接触・感染の法則によるものである。[5]オジブワ=インディアンは追っている獲物の足跡を発見するとその上に呪薬を置く。すると,その足跡をつけた獣は追跡者の見える範囲にまでひきよせられる。以上はフレーザーが論じている感染呪術のほんの一部である。
〔参考文献〕J.フレーザー,永橋卓介訳『金枝篇(全5巻)』1966〜67,岩波書店