●カール=バルト
ヨーロッパ スイス連邦 AD1886
1886〜1968 スイスの神学者。弁証法神学の運動の中心にあって,20世紀のキリスト教神学に大きな足跡をのこした。神学を学んで1911年よりスイスにおいて牧師をつとめる。1919年『ローマ書』を発表し話題となる。弁証法神学の運動をおこし,1921年ゲッチンゲン大学教授となる。のち1930年よりボン大学教授となるが,1935年にヒトラーへの忠誠宣誓を拒否して退職処分を受ける。このころドイツ教会闘争のなかにあって,告白教会を支持した。1935年以後はスイスのバーゼル大学教授として,精力的な著作活動を展開した。とりわけ,『教会教義学』(1932〜1968)は未完成に終わったものの,9,000ページを超える大著である。1962年に現役を引退したが,なお晩年にも円熟した思索の味をみせ,自由かつおうような大神学者の風ぼうを示した。とりわけ,ローマ=カトリックとの相互理解に努力した姿は印象的であった。バルトは,その神学を形成するにあたって,人間が神について語る問題を,基本的に危機としてとらえることから出発する。神学は神のことばの神学であり,『新約聖書』がイエス=キリストを神のことばと呼ぶ意味に焦点を合わせている。神について,率直かつ大胆に語るとともに,人間の応答が対応する課題が,両者組み合わされて巨大な弧を描いているのが,バルト神学の特色といえよう。バルトの場合,人間を必要としない神が,神を必要としない人間のパートナーに自発的になることに強いアクセントがおかれる。とりわけ晩年のバルトには,この点が明らかにみられるのである。バルトは,ティリッヒとともに20世紀のキリスト教神学を代表する大きな存在である。その影響はおそらく,トマス=アクィナス(13世紀)やカルヴァン(16世紀)のそれに匹敵するものとなるであろう。それゆえ,地道なアプロ一チによるバルト神学の研究が,のこされた課題であるといえる。
〔参考文献〕『カール=バルト著作集』新教出版社