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●仮親 かりおや

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 生みの親以外に特別な目的のため他人ながら親とも頼む人。養子から養親を,里子から里親を仮親と見立てたり,結婚や養子縁組,あるいは身売りや奉公に際して,親代わりとなる人を仮親と呼んだりする広義の用法もあるが,通例はそれより狭義に子方・子分が親方・親分をさして仮親とするものである。

【仮親の種類】頼む時期と目的によって仮親は二種に大別される。第1は出生直後から乳幼児期に生児の無事な成育を願い,仮親に特別な保護を求めるもの,第2は成年ないし結婚にあたり,なお未熟な社会人として大人(おとな)の仲間入りに不安を感じ,仮親に後楯を求めるものである。いずれも人生の出発点における危機を仮親の庇護のもとに打開しようとする習俗といえる。

【幼年時の仮親】出生直後の取上げ親乳付け親名付け親や,直後からやや長じても行われる拾い親養い親などがある。取上げ親は赤子を母胎から取り上げ,初めて人間社会の一員として迎えることを縁にして結ばれるもので,子取り親臍継ぎ親などともいう。職業としての産婆・助産婦が現れる以前には,素人ながら経験豊かな老婆に頼む風があった。

 乳付けは初めての乳を,すでに授乳している他人からもらうとよく育つとして,その乳付けを縁とするもので,乳親(ちおや)・乳飲み親・チアンマ(奄美大島,乳母の意)などともいう。名付け親は,七夜のころ,他人に名前を付けてもらうことによって結ばれるもので,名親名添え親などとも呼ばれる。拾い親は,赤子を辻や家の前に捨てる真似をし,あらかじめ頼んでおいた人に拾ってもらい,その人を仮親とするものである。捨てるのは,子がよく育たない家の子や父母の厄年に生まれた子で,また子が病気や怪我をしたとき,女児ばかり生まれる家に珍しく男児が生まれたときなどにもみられた。捨てるのに盥(たらい)や箕(み)に入れたり,拾うにも箒(ほうき)で掃き込む真似をしたり,とかく呪術的な方式を伴う場合が多い。さらに養い親とは病弱な子のためにとる仮の親のことで,里親や養親とは異なる。鹿児島県では,これをヤシネ親・ヤシネゴ親と呼び,とくに塩売行商人をシオテチョ(塩父)とするとよいといった。このような仮親を神官・僧侶・祈祷師などに頼み,あるいは氏神をはじめいろいろな神と取り親・取り子関係を結ぶ習俗も各地に分布している。

【成年時の仮親】成年時の仮親には烏帽子親兵児親鉄漿付け親や宿親・仲人親草鞋親など種類が多い。成年にあたって仮親をとる習俗はきわめて広く,また古代以来のものであった。682年(天武天皇10)成人式に結髪加冠の制が定められ,以来冠または烏帽子を被らせるのが重い役とされ,元服した当人と仮の親子関係を結ぶ慣習がみられた。これが元服親烏帽子親である。のちに烏帽子を被る習慣は廃れたが,仮親の名として今にまで残りユブシ親・ヨボシ親・エベス親などと訛るところもある。成人式には前髪を落として月代(さかやき)を剃ったことから,前髪親や剃刀(かみそり)親,また初めて兵児・マワシなどとも呼ばれる褌(ふんどし)を締めるようになったことから,兵児親・マワシ親などの名称もある。

 また女子は成女式に際して,歯に鉄漿をつけ黒く染めるならわしがあり,その介添え役を仮親と頼み,鉄漿付け親・鉄漿親・筆親・楊子(ようじ)親などと呼んだ。男女とも成人すると,若者組・娘組に加入する資格が認められ,若者宿・娘宿に寝泊りすることもあった。寝宿はたいてい民家の一室で,そこの主人を宿親と立てる場合が多かった。仲人親は結婚の仲人を親と立てるもの,草鞋親は他村から新たに村内に入って落ちつくのに親代わりと頼む人をさす。

 幼年時・成年時いずれの仮親に対しても生涯交際を続けるのが原則で,中元・歳暮・年始など年中の儀礼を欠かさず,また年祝いや葬送には特別な義理を尽くすものとされた。しかし必ずしも長続きせず,とくに幼年時の仮親には交際を早く打ち切る例も珍しくなかった。