●黴 かび
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徳田秋声の長編小説。1911年(明治44)8月1日より11月3日まで「東京朝日新聞」に連載。翌年1月,新潮社刊。〈笹村が妻の入籍を済したのは,二人のなかに産れた幼児の出産届と,漸く同時くらゐであった。〉という冒頭が示すように,主人公の笹村(文学者)は下宿に手伝いに来ていた娘お銀と関係して,ずるずると結婚生活に入り,子供も生まれ,無気力で息苦しい日々を送っており,師のM先生(モデルは尾崎紅葉)も亡くなる。この死の前後の冷厳な描写は有名で,同じ紅葉門下の泉鏡花の反発を買い,不和になったほどである。作家自身の生活を題材にして,きわめて客観的に描いたこの小説は,いぶし銀のような美しさがあるといわれ,秋声のみならず自然主義文学の代表作となっている。妻の過去や子供の病気など日常の不安と苦しみが果てしなく続くなかで,旅に出た笹村の孤独な心情を描いて小説は終わる。〔参考文献〕野口冨士男『徳田秋声の文学』1979,筑摩書房
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