●カーバ
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カーバとは,方形の建造物を意味しているが,メッカにあるイスラームの聖殿の固有名詞となっている。現在,カーバは聖モスクの中庭の中央に,北東に面し,大理石の基盤の上に間口約12m,奥行約10m,高さ約15mの黒灰色花崗岩造りで,その四隅はほぼ東西南北をさしている。その東隅の約1.5mの高さの所に聖なる玄石が壁面にはめこまれている。正面約2mの高さに入口があり,中に入ると床には大理石を敷き,木の柱が天井を支えている。方形殿の外側は,黒い絹布で覆われ,巡礼の期間だけ巻き上げられる。『コーラン』では,イブラーヒーム(アブラハム)と,その子のイシュマエルとが,アッラーの命を受けて創建したとする(『コーラン』2−125〜127;3−96〜97)。カーバ入口の手前に“イブラーヒームの立ち所”,さらにその手前にイシュマエルが渇をいやしたという“ザムザムの泉”がある。また,伝承によれば,ムハンマドの青年時代のカーバは,高さが人の背丈くらいで屋根もなく,火災で焼けおちたので,ほぼ現在の形に建て直され,7世紀メッカの僭称カリフ,イブン=アッズバイルが,それを拡張したが,彼の死後もとの形に戻され,1630年の改修をへて今日に及んでいるという。
古代アラビアには,石を神の象徴とする神殿が多く,カーバは古来最も神聖視され,早くから中部アラビアの宗教的中心となり,アッラー神のほかに,幾多の偶像が祀られており,祭礼期の巡礼者からの多額の収奪はメッカ商人らの財源の一つとしてメッカの繁栄と同時に,信仰の堕落と社会腐敗の原因にもなっていた。イスラーム創唱後のムハンマドが,勝利者として630年メッカに帰ると,カーバ内外にあったすべての偶像を一掃し,玄石だけを残して,アッラーこそ唯一最高の神であるとする教えを確立した。さらにムハンマドは,礼拝の方向(キブラ)をメッカに定め,偶像一掃後のカーバは,名実ともに全世界のイスラーム教徒の信仰の焦点となり,今日に及んでいる。なお,中国では,カーバを天堂・天房・天方などと呼んでいるが,カーバが“神の館(やかた)”といわれていることや,方形殿などの意を反映させているのである。
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