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●カーッス

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 説教師,物語師。アラビア語の原義は“語る人”の意。時代的にこの語り手の意味が変遷するが,7世紀中葉のころには,『コーラン』『ハディース』『預言者ムハンマド伝』などのさわりの部分を平易に説き,一般民衆の宗教的教化に当たった。彼らはモスク内での語りも許されていたが,後代になると法学者たちの手により禁止されている。しかし語りの伝統は,市井で脈々と受け継がれることになった。宗教的ではない物語師は,ラーウィー,シャーイルなどという別名で呼ばれることが多いが,アラビア語圏では一連の優れた語りものの傑作が残されている。他方,宗教的な語りも,スンナ派世界では,種々の祭日などに行われ,スーフィー教団の集いでも出し物の一つになっている。シーア派世界では,アーシューラーの前夜など,モッラーたちが感動的なパフォーマンスを行っている。語りの専門家の数は少なくなったが,語りの伝統は,今に引き継がれている。