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●家畜化と牧畜 かちくかとぼくちく

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牧畜とは、群居性でかつ草食性の有蹄類を集団的に飼育管理し、その産物を利用することによって成り立つ生活様式である。このような家畜は牧畜的家畜と呼ばれ、トナカイ・ヤギ・ヒツジ・ウシ・ヤク・ラクダ・ラマ・アルパカ・ロバ・ウマなどを含む。一方、イヌ・ブタ・ニワトリなどは、同じ家畜であっても非牧畜的家畜として牧畜家畜とは区別される。牧畜には、家畜を一定地域内に囲い込んで飼育する牧場方式と家畜を囲い込むことをせずに、人間が家畜の群れに随伴して広大な地域を移動するという移動方式とがある。ふつう、牧畜民といえば、後者の方を意味する。世界の牧畜圏は飼育家畜の種類にもとづいて七つに類型化される。第1の類型は、ユーラシア北辺のトナカイ牧畜である。第2の類型は、中央アジアのステップ地帯にみられる、ウマとヒツジを主体にして副次的にウシ、ヤギ、ラクダなどを飼育する牧畜である。第3の類型は、ヨーロッパ地中海域からアフガニスタンにかけてみられるヒツジを主体にした牧畜である。第4の類型は、中近東から北アフリカに広がる半砂漠地帯にみられるラクダ、ヤギ、ヒツジなどを主体にした牧畜である。第5の類型は、サハラ以南のアフリカのサバンナ地帯にみられるウシ、ヤギ、ヒツジを主体にした牧畜である。第6の類型は、チベットの山岳地帯にみられるヤクとヒツジを主体にした牧畜である。第7の類型は、アンデスの高地にみられるラマとアルパカを主体にした牧畜である。牧畜は、乾燥地帯や山岳高地を中心にしてひろがっていることから、農耕には不適当な自然環境に対する適応的な生活様式とみなされる。牧畜は搾乳技術と去勢技術を前提にして、初めて完成されたものになる(梅棹忠夫 1976)。現在、どの類型の牧畜民においても去勢技術が使用されている。しかし、搾乳技術は、ラマ・アルパカ牧畜では欠如し、トナカイ牧畜では一部の地域でしか採用されていない。残りの五つの類型の牧畜では、搾乳技術が採用されている。つまり、完成された牧畜はユーラシア大陸とアフリカの乾燥地帯に分布しているのである。牧畜的家畜のうち、ヒツジは1万1,000〜9,000年前、ヤギは8,000〜7,000年前、ウシは8,400年前、ウマは4,000年前、ロバは4,500年前、ラクダは4,600年前、ラマとアルパカは500年前にそれぞれ家畜化されたと推定されている。またヒツジ・ヤギ・ウシなどの初期の遺物は西アジア地域を中心にして出土している(1981)。トナカイ飼養はせいぜい3,000年前に開始されたという考え方が、有力になっている(佐々木史郎

1984)。

 搾乳の最古の証拠は4,000〜5,000年前のエジプトとメソポタミアのレリーフに描写されたウシの搾乳風景である。とくにメソポタミアのレリーフ(5,000年前ごろ)には、ウシを後足のあいだから搾乳する場面がある。現在、ウシは側面から、ヤギとヒツジは後ろからそれぞれ搾乳されるので、このレリーフによつて、ヤギかヒツジの搾乳のほうがウシの搾乳よりも早く開始されたということが示唆される。

 以上のことから、ヤギかヒツジにもとづいた牧畜がほかの牧畜的家畜を利用した牧畜よりも先行したであろうと推定される。牧畜的家畜の馴化に関して、非牧蓄的家畜の場合と同じく、個々の動物を馴化させたとする個別馴化説が考えられたことがあるが、現在では多く研究者が動物の群れを群れごとに馴化させたとする群れ馴化説をとる傾向にある。そこで、馴化した群れを人間の手元に保有する手段として梅棹忠夫は、家畜の子を人質にとることによって群れを人間の手元に保有でき搾乳もできるようになったという子の人質説を考えた。一方、谷泰は、家畜群の行動学的基礎が群れの“雑草化”にあり、これは人付けした子を群れに戻すことによって達成されるという子の人付け説を試案として提出している。

〔参考文献〕梅棹忠夫『狩猟と遊牧の世界』1976、講談社


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