●春日版 かすがばん
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平安末期から奈良の諸大寺では仏教経典の開版が盛んになったが,それらのうち興福寺が主宰したものをとくに春日版という。その経典の多くが,同寺の守護明神である春日大社に奉献されたことによる。書風・墨色・料紙などにすぐれ,1行17字づめの楷書で,毎版,面の右すみに年代・寺社・願主・施主・彫工の陰刻がある。現存する最古のものは,1088年(寛治2)3月刊行の『成唯識論(じゅうゆいしきろん)』で,模工僧観増の記がある。そのころのものは墨色が淡く,成唯識論がほとんどであったが,鎌倉時代に入り,仏教の隆盛とともに開版が最盛期を迎えると,料紙は良質に,墨色は漆黒となって経典の種類もふえていった。貞応〜嘉禄年間(1222〜27)には『大般若経』600巻も刊行されている。鎌倉時代以降の版木も,一部分ずつであるが多数興福寺に残り,現存最古のものは1195年(建久6)の彫刻で,『唯識論述記』の版木である。