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●火災 かさい

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 火のわざわい。火事ともいう。家屋・建物,建物の内容物・家財などの動産(ただし法律上,無記名債権は動産とみなされ,船舶は不動産に準じた取り扱いをうける),車両・船舶・屋外の物品・原野・山林などが,燃えて焼ける現象であるが,人の考えに反して発生したり,拡大した火事および故意に火をつけて起こされた火事などで,消火を必要とする程度まで,燃えて焼ける現象が発展した火事をいう。

【火災の種類】火災の統計上,消防庁では火災の種別を,次の五種類,すなわち建物火災・林野火災・船舶火災・車両火災・その他の火災に分類している。これらの火災のうち,建物火災が全体の過半数を占めて第1位であって,火災の約60%から70%を毎年占めている。第2位はその他の火災,第3位は林野火災,第4位は車両火災,第5位は船舶火災という順番にだいたいなっている。

【火災の発生】関係者が火を取り扱う回数が多いか,少ないかということ以外に,そのときどきの気象条件,とくに湿度(大気中の空気の乾湿の度をいう。すなわち大気中に実際に含まれる水蒸気の量と,その大気がそれと同一温度で含むことができる最大限の水蒸気の量との比で,ふつう,百分率であらわす)の高いか低いかが,火災の発生件数に深く関係していて,冬の乾燥したとき,北風が吹き荒れれば火災件数は増える。このため,日本のように春夏秋冬と四季の変化に富んでいる国では,気象と火災の関係を注意深く見守る必要がある。毎年,冬の1,2,3月は,ストーブや炬燵(こたつ)など暖房用具を使うときが多く,しかも悪いことには乾燥して室内の湿度もとくに低くなるため,火災の発生率は冬期において,とくに高くなる。裏日本においては春先に,フェーン現象(一般には,フェーンとは山の背面から吹きおろす熱風をいう。風炎,フェンともいう)のため,高温で乾燥し,また強い風が吹くから,春先の裏日本の火事は大火になりやすい。これに反し,6月ごろは,梅雨の長雨が降る時期であって,火を利用する回数も冬に比較すると少ないから,したがって統計的にみても火事の件数は少ない。火災は地域的にみて,人口が過密で集中している地域で多発する傾向がある。1963年(昭和38)においては,出火件数の約30%が6大都市で発生しているし,その他の都市と合計すると.その85%までが都市部における出火であった。また人口1万人についての出火件数でいうと,東京都が約9件で第1位を占めており,その他の市の1.6倍,郡部の4.5倍という高率を示している。なお,日本の1981年(昭和56)中の火災による損害額は1,503億300万円で,1件あたりでは247万円となっている。

【安全対策と防火】多数の人が出入りし,また勤務あるいは居住する所(防火対象物)すなわち学校・病院・工場・事業場・興行場・百貨店などにおいては,まず防火管理者を決めるとともに,その消防計画を作成しなければならない。そして,それにもとづいて,消火・通報および避難訓練などを実施したり,また一定規模以上の防火対象物には,消火・警報・避難の各設備をするよう義務づけられている(消防法)。火災予防を周知徹底させるとともに,自衛消防隊を組織しているような大きな事業所では,もちろん万一火災が発生したさいの,初期防火や消防機関への通報にも万全を期している。だが今日の火災の過半数が,一般の住宅から発生しているという現状からみて,われわれも家庭における防火には,なおいっそうの注意と防災が大切である。とくに近ごろは,火災原因もその種類が広がる一方であり,暖房器具のほかに,塗料・接着剤・殺虫剤などという身近に使用している品物にも引火しやすい物質が多量に含まれているから,これら家庭で日常何気なく使用している物品でも,火気に近づけないなどという注意をしながら使用する必要性が増大してきている。一般家庭で,火事による死傷者をなくすためには,[1]消火器具を完備したり,[2]ふだんからバケツなどに水を入れて用意しておく,などのほか,[3]老人・子ども・婦人は1階に寝るように気をつけたり,[4]2階に脱出用のロープや非常燈を用意したりするとともに,万一火災が発生したときは,床を低くはって脱出する,ぬれ手ぬぐいやタオルを鼻や口にあてるなど,ふだんの準備と心がけが,なによりも大事である。

【気象と火災】ふつう空気中の湿度が低いと,火災のとき燃える可燃物は乾燥してさらに燃えやすくなる。反対に空気中の湿度が高いと,木材などの可燃物は,空気中の水分を吸収して燃えにくくなるし,空気中の水分自体も多少は直接の燃焼をおくらせる作用をする。このほか,出火の件数と深い関係はないが,出火後の延焼と密接に関係するものに風の強さがある。すなわち風が強いと出火後の延焼は急激に増大し,火災の方向は風下にむかって扇状に拡大して行く。したがって大火は,過去においても,強風下に多く発生している。このように火災と深い関係にあるものとして「湿度と風」などの気象条件が注目されている。これらの経験から,火災の危険が予想される風速や温度と湿度のときには,火災警報が出されている。

【法律と火災】刑法上,放火罪は,放火して建造物を焼いた者に,失火罪は過失によって火災を起こした者に適用され,処罰されている。ただし,失火の民事責任については,失火者に故意または重大な過失がないときは,民事上の損害賠償責任は負わなくてもよいと規定されている。放火罪の刑は,江戸時代はもちろんであるが,今日でも非常に重く,人の住んでいる建物や汽車・電車などに放火した場合は,死刑または無期もしくは5年以上の懲役に処される(刑法第108条)。

【外国における大火事の歴史】[1]ネロの放火として有名なローマにおける8日間つづいた大火事は,ヨーロッパ初期の大火として人々に記憶されている。[2]イギリスの首都・ロンドンにおける大火は,798年,1212年,1666年の3回に及んだが,とくに1666年のロンドン大火は,世界五大大火の一つに教えられている。このほかの世界の大火は次のとおりである。[3]1700年,イギリスのエジンバラにおける大火,[4]1782年,コンスタンチノープルの大火,[5]ロシアのモスクワにおける大火の第1回は,1570年に発生し,死者は20万人に及んだ。[6]ロシアのモスクワにおける大火の第2回目は,フランスの皇帝ナポレオンの遠征による1812年のモスクワの兵火であった。[7]1824年にエジプトのカイロの大火災では死者4,000人に達した。[8]1835年にアメリカ合衆国のニューヨークにおいて大火災が発生し,この火事のもたらした損失は,当時の金額で3,000万円の巨費に及んだ。[9]1871年アメリカのシカゴにおける大火災での損失は,実に1億6,500万円の巨額に及び,シカゴ市民のこうむった損害は甚大であった。[10]1872年にアメリカ合衆国の東北部,マサチューセッツ州の州都ボストンで大火事が発生し,市民に多大の被害を与えた。この大火の損失は,当時の貨幣価値の高かった時代の日本円に換算してみると7,500万円相当分が灰燼に帰したことを物語っている。

【江戸の十大火災】[1]1657年(明暦3)1月18〜19日の大火(振袖火事・丸山火事・丁酉火事。江戸城の本丸が焼け,災死男女10万8,000余人。[2]1682年(天和2)12月28日の大火(お七火事)。[3]1698年(元禄11)9月6日の大火(勅額火事・中堂火事)。[4]1703年(元禄16)11月29日の大火(水戸様火事)。[5]1717年(享保2)1月22日の大火(小石川馬場火事)。[6]1772年(明和9)2月29日の大火(目黒行人坂火事)。12時ごろ大円寺から出火した。死者約1万4,700人,不明約4,100人の多数を出した。[7]1794年(寛政6)1月10日の火災(桜田火事)。[8]1806年(文化3)3月4日10時ごろ芝の車町から出火して大火事となった。死者は約1,200人の多数に及んだ(車町火事・牛町火事・丙寅家事)。[9]1829年(文政12)3月21日の大火(佐久間町火事・己丑火事)。[10]1855年(安政2)10月2日の地震による大火(地震火事)。

〔参考文献〕小鹿島果編『日本災異志』1982,五月書房

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