●笠 かさ
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かぶりものの一種で,傘と区別するために“かぶり笠”ともいう。一般にスゲ・イ・タケなど植物性の材料を使用して低円錐形に編み,これにヒモなどをつけて頭上にかぶる。資材・製作方法・形状・用途・使用者などの違いにより,さまざまな種類・名称がある。語源については『倭訓栞(わくんのしおり)』に〈重る義なるべし〉とあり,『大言海』では〈翳(かざす)ノ語根ナラムカ〉とみえる。【笠の歴史】笠は古くから使用されており,中国では早く『詩経』に,日本でも『日本書紀』にみえる。また中国・日本以外に,広く東南アジアの各地でも使用されている。日本ではスサノオノミコトが青草で笠をつくったという話があり,またのちの市女(いちめ)笠や饅頭(まんじゅう)笠に似た形の笠をかぶった埴輪も発見されている。中世には武士の狩猟や流鏑馬(やぶさめ),あるいは田楽法師などに綾蘭(あやい)笠が用いられ,女子の外出用には市女笠があった。ほかに竹笠・菅(すげ)笠・檜(ひ)笠・塗笠・網代(あじろ)笠なども使用された。戦国時代になると下級士卒が陣笠をかぶるようになり,江戸時代初期には士民ともに多様な形の編笠を用いるようになった。女子は寛永のころは網笠・塗笠などを用いたが,明暦年間に葛籠(つづら)笠が出ると,塗笠は老女だけが使用するようになる。また武家女性は加賀笠を用いた。江戸時代中期になると編笠がすたれ,代わって広く菅笠が用いられるようになった。武士は一文字形,庶民はすりばち形などを使用したが,特殊なものに三度飛脚の三度笠・鳥追女の鳥追笠・虚無僧の天蓋(てんがい)などがあった。花笠は俳優や女子が舞踊に使うものだが,祭礼で氏子がかぶる菅笠に造花をつけたものも花笠といった。幕末になると伊豆韮山(にらやま)代官の江川太郎左衛門が考案した韮山笠が武士のあいだで用いられた。明治・大正時代は人力車夫が饅頭笠を使用していた。笠は外出や野外労働のときに用いるものであったが,明治時代になって帽子が普及し,さらに昭和に入って麦わら帽子・経木帽子が安価に入手できるようになると,ほとんど実用に供されることはなくなった。今では祭礼のときに菅笠をかぶったり,葬式のときに折編笠をかぶって送る習俗以外には,ほとんどみることができない。
【笠の種類】笠はその表面の形態から編笠・組笠・縫笠・押え笠・張笠・塗笠の6種に分けられる。編笠は主として稲ワラ・イの茎などを材料として編まれたもので,円錐形・円錐台形・帽子形・円筒形・漏斗形・二つ折形のものがある。綾藺笠・熊谷(くまがい)笠・天蓋などがあり,その軽快さゆえにごく最近まで日よけ用として広く用いられていた。組笠は主としてヒノキ・マツ・スギ・タケの細片を組んでつくったもので,円盤形・円錐形・半円球があり,網代笠・檜笠などが含まれる。軽快で晴雨兼用で使用される。縫笠はスゲ・カヤ・麦ワラなどを縫ってつくるもので,円盤形・円錐形・円錐台形・帽子形・半円球形・褸折形・桔梗(ききょう)形があり,市女笠・三度笠・加賀笠・菅笠などが含まれる。縫笠は現在では“すげがさ”と呼ばれ,主として雨笠として用いられる。押え笠はタケの皮やシュロの皮などをタケの骨組の上にかぶせて糸・竹ヒゴなどで押えたもので,円錐形・帽子形・半円球形・褸折形・桔梗形があり,晴雨兼用で使用される。竹皮笠や蒲葵(びろう)笠などがあるが,日本に限らず中国・台湾から広く東南アジア一帯に分布している。張笠は布・紙・皮などを竹の骨組の上に張ったもので,円錐形・半円球形・褸折形・桔梗形があり,陣笠や饅頭笠などが含まれる。現在ではほとんど使用されていない。塗笠は編笠・組笠・張笠などの表面にさらに油・渋・漆(うるし)などを上塗りして加工したもので,葛籠笠・陣笠・韮山笠などの種類がある。塗笠は江戸時代には用途に応じて幅広く使用されていたが,現在ではほとんど使われていない。
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