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●蜻蛉日記 かげろうにっき

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 藤原道綱(みちつな)の母作。954年(天暦8),藤原兼家(かねいえ)の求婚から,974年(天延2)にいたる21年間の結婚生活を回想している。作者は歌人としても名高いが,その出身は受領(ずりよう)階級で,はからずも当時の権門の妻となる。道綱をもうけるが,兼家との仲はうまくゆかず,わが子の成長を唯一の楽しみとする日々を送らねばならなかった。当時の一夫多妻のなかで,夫の愛を強く求めようとする作者の心が,裏切られ傷ついてゆく有様が,きめこまかく描かれている。上・中・下の3巻にわかれていて,上巻は自叙伝に贈答歌を軸に展開され,中・下巻にいたると,深刻な問題の描出のため,散文による叙述が目につくようになる。唯一の自己表出の手段であった歌を対象化してゆく散文精神の成長がここにみられる。『土佐日記』によってはじまる仮名散文表現技法の,大きな前進を指摘できるだろう。