●蔭膳 かげぜん
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長期の旅に出た者の安全と無事を祈って,留守宅の家族が食膳を調え供える習俗。一般に旅に出た者がひもじい思いをしないために蔭膳を供えると説明されることが多い。しかし本来的意味は,旅に出た当人に供えるというよりも,むしろ旅人を守護する神,あるいは餓鬼・ひだる神のように旅人に災をなす神に供えるものであった。たとえば伊豆諸島の島々のように,本土とのあいだを往来する船に乗り込んでいる家族の者のため,蔭膳を神棚に供えたという例もあり,また昆布の入ったおかずとナマスを必ず添えるものであったとするところ,家によっては蔭膳を二つも三つも供えたという地方も認められる。このほか供えた椀の蓋に露がついていれば吉兆,逆に御飯の湯気が水滴となっていないと不吉などと,供えた蔭膳の状態によって,旅に出た者の安否を占う場合もあった。こうした蔭膳の習俗は古くから行われてきたものであるが,とくに戦時中に都鄙をとわず盛んに行われた。