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●家訓 かくん

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 父や家長が子孫・一族あるいは家臣を対象に説き明かした訓戒をさす。これは一般人を教化することを目的とした教訓ではない。しかし単なる子弟教育の訓戒というよりは家の存続・繁栄を期しての訓戒である。その目的とするところは教訓的であり,壁書・家法といっても,みな道法的なにおいが強い。家族制の上にたち家長権による所領保持とかかわっている。もとは皇室・摂関家にもあり,武家権門にも存在している。そうしたものは神儒仏で飾りたてられ,こい道徳性をもつ。内容はその家の優れた人に仮託されたものも少なくない。そしてときがたつごとに改訂されて存続している。加えて武士は武家貴族化するに伴い,公的な面が強調され,さらに領主化する度合いによって政治の重要性が説かれている。そのほかに商人の家や豪農の家にも家訓がかなりつくられている。その範は武家に求めることができる。その代表的な事例が中世の武家家訓であり,当時の武家の思想を明確にする上で有効なものである。たとえば北条重時の「六波羅殿御家訓」および「極楽寺殿御消息」がある。これは将来の要職をになうものの処世訓であり,為政者武士の教訓でもある。そこにはかなり計算された判断力の育成,政治性の獲得のための修養,その反面,普遍的道徳性をもつべきものである,という二つの側面をよみとることができる。室町時代になると故実世界の成立に伴い武家貴族として剛勇のみでなく文人としての教養の必要性が「竹馬抄」「樵談治要」をよむと強調されている。こうした動きのなかで自分の家だけは勢力の維持と発展を期そうと考えたものも少なくない。「伊勢貞親家訓」は乱世のなかで,家門の保全と勢力伸張に必死の努力を払い,実力尊重の世の到来を説いている。戦国の家法のごときは,富国強兵の備えのあり方を個別に追求していることがみえ,とくに軍事力の編成のしかたに工夫をこらそうとつとめている。さらに下剋上の原理と克服する道を模索し,算用の道も教えつつ努力を求めるものも少なくない。