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●隠れ里 かくれざと

アジア 日本 AD 

 水辺・山奥・洞穴・塚墓などの先にあると考えられた他界。理想郷。はるか古代からの日本人の異郷観念に淵源すると考えられる。特別に神に選ばれ,福分をもつ者だけがここにいたり,富貴を得ることができるという観想があったらしく,たとえば柳田国男の『遠野物語』によると,岩手県遠野地方のマヨイガという隠れ里に入った者は長者になると伝えられた。昔話の「鼠浄土(ねずみじょうど)」や「団子浄土」に見られる地下浄土も同様の観想によるものであろう。隠れ里にはとくに膳椀などの道具を貸す「椀貸淵」「膳貸淵」の伝承と結びつく場合が多く,その事例は全国的に分布する。湖沼淵泉には竜宮が,塚墓洞穴には根の国が連想せられたものであろう。柳田国男は,これら椀貸伝説の形成・伝播には木地屋が関与していたと推論する。また全国に散在する「平家谷」などのいわゆる落人部落も,平家その他の武士の末裔の隠棲の場と考えられ,隠れ里と呼ばれた。

〔参考文献〕柳田国男「隠れ里」『定本柳田國男集』5,筑摩書房