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●拡大家族 かくだいかぞく

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 アメリカの社会人類学者のマードックは家族の形態を,核家族・複婚家族・拡大家族の3種に分類したが,その分類に従えば,親子関係の拡大をとおして,あるいは兄弟(もしくは姉妹)の同居をとおして,複数の夫婦から構成される家族形態をさす。彼とは別に,ラングも家族形態の分類を試み,夫婦家族・直系家族・合同家族との3分類を提唱している。このうち,直系家族とは親子2世代以上にわたって直系成員が配偶者を迎えて同居する形態をいう。合同家族とは兄弟(もしくは姉妹)たちが同居し,それぞれ配偶者を迎え,複雑化した構成をとる形態をいう。マードックの拡大家族の定義は,このラングの直系家族と合同家族とを合わしたものに,ほぼ相当する。彼が拡大という用語を使うときは,核家族を基本としそれが拡大されたから,という意味を込めているが,マードックの規定には異質な構成原理からなる二つの形態が混在していたわけである。拡大家族という用語とまぎらわしいことばに大家族がある。だが,大家族ということばには成員数が比較的多いという内容しか込められていないし,その構造や機能に言及した概念ではないので,しいて用いるほどの有効性はない。直系家族の実例は, 3世代の同居を伴う日本の家にみることができるので,理解はしやすい。合同家族は,インド・ケララ州のナヤール=カーストのタロワド,ユーゴスラヴィアのザドルーガ,フランス農村のメスニー,中国の家(チャー)などと,それぞれの民族で名称はさまざまだが,広範囲にわたってみることが可能である。合同家族の典型的な例として中国社会をあげることができる。そこでは,両親とともに息子たちすべてが同居し,嫁を迎えることが理想とされていたので,複雑な構成をとる形態が出現する。先祖伝来の財産はその構成員の共同所有に帰し,かつ祖先に対する祭祀も彼らはともに営んでいた。ただし,兄弟たちの摩擦・嫁たちの不和が生じると,分解してしまい,直系家族もしくは夫婦家族へと移行してしまうし,しばしば“輸流管飯”といって,分家した子どもたちのあいだを,親は一定期間,順々に回って歩く慣行も生じた。分家時には,兄弟のあいだで財産は均分に分割され,それをもとに彼らは再出発する。しかし次の世代で息子たちが残留して嫁を迎えると,再び複雑な構成をとることになる。こうした集団を家長が指揮し,かつ家産を管理していたが,家長といえどもむやみと独断で財産を処分するほどの権限はもち合わせなかった。とはいっても,「孝は天地の常道」と説かれていたように,子孫は親に対して孝の精神が要求され,ここに父系的な一体感が形成された。中国の例は父系で,かつ父処婚制にもとづいていたが,母系制の社会でも複雑な構成はみられる。台湾のアミ族はその1例である。アミ族では比較的近年まで,妻方居住婚が規範となっていて,娘たちは家に残留し,婿を迎えていた。したがって,母系系譜にもとづく複雑な構成ができあがったことになる。こうした集団を統括し,財産を管理する人は“家の幹”と呼ばれているが,概して最年長の女性がそれにあたった。婚入男性は,婿としての地位に置かれ,家の財産や運営に対する発言権は小さいものでしかない。ただし,アミ族では婚出男子の生家に対する発言権は大きい。生家に重大事がおこり,水牛・田畑などの財産を分割するときに最大の発言権をもつのは,姉妹と母系的につながった兄弟,つまり婚出男子である。同じ母系でもインドのナヤール人のあいだでは訪妻婚の制度をもっていて,夫は終生にわたって妻を訪問し,妻と同居することはなかった。姉妹たちはみな生家に残留し,それぞれ子を生んだが,彼女たちと同居したのはその兄弟たちであったから,集団構成は民族ごとに特色があったことになる。

〔参考文献〕マードック,内藤莞爾監訳『社会構造』1978,新泉社