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●核拡散防止条約 かくかくさんぼうしじょうやく

AD1968 

アイルランドやスウェーデンなどが提案し、以後アメリカ・ソ連両大国が推進して、1968年7月1日にワシントン・モスクワ・ロンドンの3市で調印された「核兵器」の不拡散に関する条約をいう。1970年3月に発効した。同日までに98カ国が署名したが、1984年8月現在、この条約の締約国は120カ国となっている(核兵器の不拡散に関する条約国一覧表を参照)。日本は1976年6月8日にこの条約に批准した。なお、核兵器国であるフランス・中国および非核兵器国であるインド・パキスタン・南アフリカ・イスラエル・アルゼンチン・ブラジルなどの国々は、この条約に加盟していない。条約の有効期間は25年。ただし、25年後に条約のその後の有効期限を決めるための会議を開き、有効期間を無期限にするかまたは一定期間延長するかを、過半数で決定することになっている。現在5年ごとに、条約の目的と規定が実現されているかどうかを確認するための再検討会議が、スイスのジュネーヴで開かれている。

【条約の概要】この条約は前文と11カ条の本文からなる。主要な内容としては、核兵器の不拡散・査察・原子力平和利用の促進・核爆発の平和利用・軍縮・地域的取り決め・改正・再検討・効力発生・脱退など11項目にわたる規定が盛り込まれているが、なんといっても本条約の重点は、非核兵器国を拘束する「核兵器の不拡散」とこれを保障する「査察」に置かれている。

 第1条と第2条は核兵器の不拡散に関する条項である。第1条は、核兵器国を拘束するためのもので、〈核兵器国は、核兵器その他の核爆発のための装置(以下核兵器等と略す)またはこれに対する管理権をいかなる相手にも譲渡してはならない。また非核兵器国が核兵器等を製造したり、またその他の方法によって取得することを援助してはならない〉と規定している。なお、この条約でいう核兵器国とは、1966年末までに核兵器等を製造し、爆発させた国(具体的にはアメリカ・ソ連・イギリス・フランス・中国の5カ国)をいうことにしている。第2条は、非核兵器国を拘束するためのもので、〈非核兵器国は、核兵器等またはこれに対する管理権をいかなるものからも受領してはならない。また核兵器等を製造したりまたその他の方法によって取得してはならず、核兵器等の製造について援助を受けてはならない〉と規定している。とくに、この第2条は本条約の大きな狙いであるといわれている。第2条の禁止条項を国際的に保障するため、第3条では、査察の規定を設け、平和利用の原子炉にたまるプルトニウムが軍事利用に転用されるのを防ぐことにしている。すなわち、〈非核兵器国は原子力が平和利用から核兵器等にひそかに使用されることを防止するため、国際原子力機関の査察を受けなければならない〉として、非核兵器国に対する査察の義務を負わせており、このため非核兵器国は、個々に、またはほかの国と共同して、国際原子力機関と協定を締約することになっている。第4条は、原子力平和利用の促進に関するもので、〈すべての締約国は原子力平和利用の研究開発を発展させる権利を有する〉(第1項)ことや、〈原子力平和利用のための設備や資材などにつき、または科学的技術的な、情報交換を促進し、発展途上国に対して協力〉(第2項)することなどを盛り込んでいる。このほか、核爆発の平和利用に関しては、〈その利益が非核兵器国にも提供されること〉(第5条)、軍縮に関しては、〈各締約国は核軍備競争の早期停止および核軍備の縮小に関する効果的措置等につき、誠実に交渉を行うことを約束すること〉(第6条)、〈地域的取決めに関しては、各国の領域内に核兵器の存在しないことを確保するため、地域的な条約を締結することを妨げられないこと〉(第7条)、脱退に関しては、〈各締約国はこの条約が自国の利益を著しく危うくしていると認めたときは、この条約から脱退(国連安保理事会に対し3カ月前に予告)することができること〉(第10条)、などの規定を盛り込んでいる。

【条約の性格】核兵器不拡散条約の成立は、核兵器保有国の増加に歯止めをかけたという意味において戦後の軍備管理史上画期的な意義をもつものといえる。しかし、この条約は核兵器国、とくにアメリカ・ソ連の利益を基調として考えられており、非核兵器国の安全保障や将来の原子力産業の面で、大きな問題を残しているともみられている。本条約には次のような大きな特徴がある。第1は、本条約は非核兵器国の核兵器保有を禁じているが、反面核兵器国の核兵器の質量・配備・備蓄などについていっさい制限していないということである。このことは、本条約が真の核兵器の不拡散を目的としたものではなく、むしろ核兵器国の増加防止を狙ったものということができる。1963年に調印された部分的核実験禁止条約とこの条約によって核保有国増加防止の取り決めが完成をみたともいわれている。第2は、査察が非核兵器国にのみ要求されていて核兵器国はなんら義務を負っていないということである。すなわち、原子力平和利用の諸活動に関して、記録・査察などの保障措置(軍事利用への転換を防止するための一種の国際管理)の受諾を約束するのは、非核兵器国だけであって核兵器国はそれを受諾する義務を負っていないということである。第3は、本条約には核兵器国である中国やフランス、あるいは核実験を実施したインドが加わっていないということである。これらの特徴はアメリカ・ソ連両大国が軍事的には核兵器国の増加を防止し、また産業的には原子力の平和利用の面での優位を確保することによって、アメリカ・ソ連の世界体制を維持しようとすることを狙ったものであることを示しており、したがって、非核兵器国には各種の不満や要求があるといわれる。基本的な不満は、この条約の不平等性と不完全性にあり、次の点が指摘されている。[1]核兵器国に対してはなんら実質的な制約を加えず、非保有諸国における水平的拡散のみを禁止していること、[2]平和利用面においても非保有国にのみ国際査察を受ける義務を課していること、[3]非保有国の安全の確保を具体的に保障していないこと、[4]現核兵器保有国である中国・フランスが加盟せず、また潜在的核兵器国であるインドが未調印であること。このなかで、とくに非核兵器国の安全保障に関しては、アメリカ・ソ連・イギリスの3国宣言(核兵器による侵略または脅威を受けた締約国に対しては、国連憲章に従って援助を与える旨の宣言)と、国運安保理事会決議(核兵器による侵略や脅迫は安保理事会、とくに核兵器国であるその常任理事国が、国連憲章にもとづく義務に従って、直ちに行動しなければならない事態をひきおこすものであることを認める旨の決議)および本条約の第7条によって対処しようとしているが、3国宣言や国連安保理事会決議は、いわば国連憲章の一般的原則を再確認したものであり、単なる意向の表明にすぎないことから、この程度の保障では非核保有国の安全保障の信憑性は現実にはほとんど期待できないとみられている。このほか、原子力平和利用の面でも、産業技術の秘密の漏洩や施設の運転の阻害などの問題が生起する可能性があり、今後の問題を抱えている。

【条約と日本】日本は、原子力の平和利用の面で不利な取り扱いを受けないようにとの配慮から、条約の発効に先立ち、1970年2月3日調印に踏み切ったが、調印と同時に政府は声明を発表し、次のような基本的考え方を明らかにした。[1]核兵器不拡散条約が核軍縮の第1歩となることを確信し、多くの国の参加を望むこと(とくにフランスと中国の参加)。[2]核兵器国と非核兵器国の差別は究極的には核兵器の撤廃によって解消されるべきだが、それまでのあいだ核兵器国は特別の責任を負うべきであること。[3]非核兵器国はこの条約によって原子力の平和利用をいかなる意味でも妨げられてはならないし、またいかなる面においても差別的取り扱いを受けてはならないこと。

 1976年6月8日、日本は同条約に批准し、条約の規定にもとづき、1977年12月2日、国際原子力機関とのあいだで査察に関して協定を締結し、現在、同機関による査察を受けている。

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