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●鏡物 かがみもの

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 「鏡」の字を書名にもつ歴史物語の総称。『大鏡』『今鏡』『水鏡』『増鏡』などをいう。作品は,いずれも,対象となる時代を生きていた人物が,見聞した事実を語り,それを聴聞している者が記録するという体裁をとり,往々批判をも加えている。『今鏡』以下の作品は,『大鏡』の影響を強く受けながらも,作品の性格はかなり異なっている。

[1]大鏡→大鏡の項。[2]今鏡(いまかがみ)10巻。作者は未詳であるが,藤原為経(寂超)説が有力。成立時期も未詳,12世紀末か。1025年(万寿2)から1170年(嘉応2)までの記述で,紀伝体で書かれている。史実に正確さがあり,史料的価値が高い。小鏡 続世継(ぞくよつぎ)。[3]水鏡(みずかがみ)3巻。作者は未詳であるが,中山忠親説が有力。成立時期も未詳,12世紀最末期か。神武天皇から仁明天皇の850年(嘉祥3)までの記述で,編年体で書かれている。おもに,『扶桑略記』を仮名文に抄録したものといわれる。仏教界の消息に多く筆を費やす。史料的価値も低い。[4]増鏡(ますかがみ)17巻,また増補本といわれる19巻本,20巻本がある。作者は二条良基説が有力。成立時期は,1368年(応安1)から1376年(永和2)のあいだか。後鳥羽天皇の生誕から後醍醐天皇の京都還幸(1333,正慶2)までの記述で,編年体で書かれている。『源氏物語』『栄化物語』の影響が強く,文章は流麗な擬古文で,時代や世相をみごとに描出し,文芸史的価値は高い。

〔参考文献〕松村博司『歴史物語改訂版−−栄花物語と四鏡とその流れ−−1979,塙書房

山内益次郎『今鏡の研究』1980,桜楓社

西沢正二『増鏡研究序説』1982,桜楓社