●海運 かいうん
AD
海運とは海上を船によって人や貨物を運ぶこと,すなわち海上運送をいう。しかし現在一般に海運というと海上運送を営業とする場合をさす。広い意味で用いられる陸上交通に対しては,水上交通という用語が使用されるが,海運には河川・運河・湖沼などの水上交通は含まれない。海運の基礎施設は,船舶・港湾・航路などであり,これらを活用する海運業は,内航海運と外航海運に分けられる。【水上輸送】水上輪送の利点は,容積が大きく,重い貨物を移動させるのに,小さな力しかいらないことである。輸送の速度は遅いが,船や港湾施設の建設費用は,耐用年数からみて,鉄道や道路に比して安く,維持費もまた一般に少なくてすむ。このため石油・鉄鉱石・石炭などの重量物の大量の輸送に対し,水上輸送はきわめて有利である。水上輸送の欠点は,速度が遅いことと,貨物の積み卸しに大きな設備や高い労賃を必要とすることである。しかし各大陸相互の貨物輸送は,海上輸送によるほかはなく,世界が一つになって有無相通じる社会では,海上輸送の重要性はますます増大している。速度が遅いことは,水中翼船や快速艇の出現により補われ,積み卸しの設備や労賃は,石油のような液体や,穀物や鉱石のように粒体の場合,機械化や専用船の利用によって安価にすることができ,コンテナ船の利用により,陸運と海運が一体化する傾向も強まってきた。
【船舶】船舶を用途からみると,商船・特殊船・艦艇に分けられ,海運を担当するのは主として商船である。商船は客船・貨客船・貨物船・油槽船(タンカー,貨物船の一種ともみなされる)などに分けられ,客船・貨客船は移民船・観光船・渡峡船・郵送船などと呼ばれることもある。貨物船には,一般貨物船と特殊貨物船とがあり,特殊貨物船には油槽船・液化ガス運搬船・糖蜜輸送船・鉱石運搬船・石炭運搬船・セメント運搬船・木材運搬船・果実運搬船・車両運搬船・ボーキサイト運搬船などがあり,特殊貨物船以外の貸物船が一般貨物船である。特殊船には,漁船・捕鯨船・引き船・ケーブル敷設船・消防船・工船・給水船・給油船・巡視船・税関監視船・水洗船・砕氷船・灯台補給船・練習船・観測船などがあり,艦艇には戦艦・航空母艦・潜水艦・巡洋艦,その他がある。これらの特殊船・艦艇は,直接海運に携わることはまれであるが,海上交通を維持発展させるためには,それぞれ重要な役割を演じている。船舶を経営上からみると,定期船・不定期船に分けられ,また船を自分の会社で運航するか,他のオペレーターに委任するかによって,自営船と用船扱船に分けられる。船舶を材質や機関の構造からみると,木船・鋼船・レシプロ船・蒸気タービン船・ガスタービン船・ディーゼル船・電動推進機関船・原子力機関船などがある。また甲板の状態からみると,重甲板船・軽甲板船・覆甲板船・遮浪甲板船などがある。
【船のトン数】船の大きさを示すトン数には,総トン・重量トン・登簿トンなどいろいろなものがある。総トン(Gross ton)は船の総体積から機関室などの体積を除いて,35.3平方m(100立方フィート)を1tとしたものである。重量トン(deadweiGht ton)は,船の満載状態で貨物・燃料・食糧・船用品などの総重量,すなわち船の載貨重量から船体と機関の重量を除いた重さで,2,240ポンドを1tとしている。両者の関係は船の種類や構造によって一様ではないが,重量トンで1万tの貨物船は,総トンでは約70%の7,000tくらいで,逆にいうと総トンのおよそ1.5倍が重量トンになる。用船料や船の売買などの商取引では一般に重量トンが用いられる。登簿トン(reGister ton)は純トン(net ton)ともいわれ,貨物や船客を収容して営業の目的に利用できる部分だげの容積にもとづくトン数で,船名録に記載され,船にかける税金や通航料を徴収する場合に使われる。
【港湾】船舶が安全に停泊できる水陸の接続地を港湾といい,貨物の積み卸しや船客の乗降できる施設を備えているものである。港湾は使用目的から,商港・工業港・商工業混成港・漁港・避難港・軍港などに分けられ,管理方法からは公港・半公港・委員管理港などに分けられる。関税法による区別では,開港・不開港に分けられ,わが国の港湾法によれば,重要港湾・地方港湾・特定重要港湾・避難港の別がある。特定重要港湾は重要港湾および地方港湾のうち外国貿易上とくに重要なものをいい,東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・関門の6大港のほか四日市・清水など計17港が指定され,重要港湾106港,地方港湾960港があり,地方港湾のうち37港は避難港である。
【航路】航路は船の航行する通路で,外国航路と内国航路,定期航路と不定期航路,命令航路と自由航路など種々の分け方がある。また航路区域によると,遠洋区域・近海区域・沿海区域・平水区域などに分けられる。しかし一般的には,北大西洋航路・南大西洋航路・欧亜航路・北太平洋航路・南太平洋航路・東西アフリカ航路など,多くの航路が集積する場所の呼称として用いられる。世界の主要航路とその特色をみると次のようになる。北大西洋航路は北アメリカ北東部と西ヨーロッパを結んでいる。この二つの地域は人口も多く経済活動が活発で高度に発達した文化をもっているので,北大西洋航路は貨物の流れが最も多い。世界の大きな港の大部分はこの航路の終端港として活動しており,世界航行船舶の5分の1はこの航路を航行しているといわれる。欧亜航路はアジアの諸地域およびオーストラリアを,インド洋北部・紅海・スエズ運河・地中海を通る水路でヨーロッパに結びつけている。この航路は1869年にスエズ運河が開通してから重要性が高まり,とくにイギリス・フランスにとって重要であった。それはこの航路に沿う数多くの特産物を生産する植民地や,人口の多いインドや中国などをヨーロッパ諸国に結びつけていたからであった。戦後植民地は独立して政治的には旧本国の支配を離脱したが,経済的には先進国,なかでも旧本国に依存する面が強く,この航路の意義は相変わらず大きい。また中近東における石油の産出および輸出は,世界の石油市場における地位がきわめて高く,海運界における石油のシェアの増大とともに,この航路の重要性はいっそう高まっている。北太平洋航路は東アジアと北アメリカを結んでいる。この航路はアリューシャン列島付近まで北の方へ寄っている大圏コースと,ハワイ諸島に寄港する南方航路とがある。ハワイ諸島は太平洋交通の焦点といわれ,オーストラリア・北アメリカの太平洋岸・パナマ運河・東アジアなどの諸港を結ぶ多くの航路が集中している。日本の経済成長と貿易の拡大は北太平洋航路を移動する貨物の量を増大させ,世界におけるこの航路の意義を大きくした。南大西洋航路はヨーロッパ諸国と南米東海岸を結んでいるが,南米の中部以南では,ヨーロッパとの関係がアメリカ合衆国との関係より密接で,農畜産物は北へむかい,工業製品は南へ移動している。南太平洋航路はオーストラリア・南米西海岸と東アジア・北米西岸とを結んでいるが,沿岸には人口が少なく,外国貿易の振るわない地域が多いので,日本とオーストラリアとのあいだを除いては移動する貨物の量は少ない。東西アフリカ航路(ケープ航路)は欧亜航路とほぼ同じ地域を結合しているので,スエズ運河開通後は重要性を減じた。しかしスエズ運河の閉鎖とタンカーの大型化によって,中東からヨーロッパへの石油の輸送はこの航路を経由する場合も多くなった。このほかアメリカ合衆国の東西両岸を結ぶパナマ運河を経由するパナマ航路も輸送量が増大している。アジアとアフリカのあいだおよび南北両米間の地峡部にスエズ運河とパナマ運河が開通したことは,世界における大洋航路のパターンに大変化をもたらし,海洋航行に大きな利益を与えた。最近は海上輸送量の増大により両運河とも交通が頻繁となり,狭隘を感じさせている。このためスエズ運河の規模の拡大や,第2パナマ運河の開削などが,政治的・軍事的意義も含めて,重要な問題となっている。
【各国の商船保有量】国別の海運の動向を示す指標の一つとして,国別の商船保有量がよく用いられる。ロイド統計によると1960年の世界の商船保有量は1億2,977万総トンで,国別ではアメリカ合衆国(19.14%)とイギリス(16.28%)が断然多く,リベリア(8.69%)・ノルウェー(8.63%)・日本(5.34%)・イタリア(3.95%)・フランス(3.70%)・ギリシア(3.49%)・パナマ(3.26%)・ソ連(2.64%)などの順となっていた。1970年になると世界全体は2億2,749万総トンに増加し,各国の比率も大幅に変化した。すなわちリベリア(14.64%)・日本(11.87%)・イギリス(11.35%)・ノルウェー(8.50%)・アメリカ合衆国(8.12%),ソ連(6.52%)の順となり,日本の躍進がめざましかった。1980年には世界全体が4億1,891万総トンに増加し,各国の比率はリベリア(19.12%)・日本(9.75%)・ギリシア(9.40%)・イギリス(6.46%)・パナマ(5.76%)・ソ連(5.58%)・ノルウェー(5.24%)・アメリカ合衆国(4.40%)などの順となっている。1982年にはリベリア・日本・ギリシア・パナマ・ソ連・イギリス・ノルウェー・アメリカ合衆国・フランス・イタリア・中国の順となり,ソ連と中国の躍進が目立っている。リベリア・パナマなどが商船の大保有国となっているのは,税制上の優遇措置を与える便宜置籍船を大量にもつためである。アメリカ合衆国では船員の賃金が高く,自国船員の配乗を法で規定しているので運航費が高くなり,これを逃れるためリベリアやパナマに便宜置籍する船が多くなった。ギリシアは保有量も多いが.リベリアに置籍した船も多く,実質的にはアメリカ合衆国・日本と並ぶ3大海運国といえよう。
【海運市場】工業原料や燃料・食糧など,その輸送を海運に依存しているおもな海運市場には次のようなものがある。石油の積出地である中近東とベネズエラ,東南アジアの米・鉱石,オーストラリアの羊毛・小麦・鉱石,インドの綿花・鉱石・植物油用種子,南アメリカの小麦・畜産物,北米東海岸の粘結炭,北米西海岸の小麦・スクラップ・木材,メキシコ湾岸の小麦・綿花などが著名である。西ヨーロッパや日本・アメリカ含衆国などから積み出される工業製品は,特定港間の大量輸送が行われることがまれなため,海運市場として特筆されることは少ない。おもな海運市場から積み出される貨物の輸送のための用船契約や船の売買契約は,主としてロンドンやニューヨークの海運取引所を通じて行われる。すなわちロンドンとニューヨークは世界海運の中枢的機能をもつ2大中心地である。海運企業には一般貨物・石油の輸送,あるいは定期船業などいろいろなものがあるが,近年は兼営するものが多い。また不定期船業者といわれる大量貨物の輸送をおもな業務とする企業も目立つようになった。定期船は一定の発着日時表によって運航している船で,主として雑貨・工業製品のような個数の多い個品輸送を行っている。不定期船はスケジュールによって運航するのではなく,有利な荷物を捜して世界の港から港へと航海している。定期船はおもに多数の荷主から委託された個々の荷を輸送し,不定期船は一船単位の大量荷物を扱っている。海運業を経営する人や会社を船主という。本来は船の持主を船主というが,自分で運航しないで貸料をとる純船主もあれば,自分の船だけでは足りないため,ほかから船舶を用船(チャーター)して運航するものもある。また船の運航を業とするものを運航業者(オペレーター)というが,運航業者が船をもたない場合もあるし,荷主が自分の船で自分の荷物の一部を運ぶこともある。
【海運の歴史】古代文明発祥の地では筏・丸木舟・箱舟などによる河川交通がまず行われ,やがて帆を張った船を利用して河川から沿岸交通に乗り出した。フェニキア人はシリア海岸からエーゲ海の航路を開拓し,海洋航海術はクレタ人をへてギリシア人に受け継がれ,さらにローマ人によって地中海の航路が充実した。中世になると沿岸航路は大西洋沿岸からバルト海にひろがり,他方,紅海やインド洋の航路も開かれたが,欧亜にまたがる航路の拡大は十字軍の影響が大であった。しかし当時の航海はつねに危険にさらされ,かつ長い月日を要したので貿易品の価格はきわめて高価であった。産業革命期になると海上交通が飛躍的に発展し,新大陸の発見以後,各国は武装商船隊を編成して植民地の開拓と貿易の拡大を図り,スペイン・ポルトガル・オランダ・イギリスなどは世界の海運に対する激しい主導権争いを展開した。1807年にフルトンが汽船の試航に成功したのち,汽船は大西洋航路をはじめとする海上交通に進出した。欧米先進国における産業革命の発展は,世界の原料・燃料・製品の海上輸送需要を激増させ,各国は自国の海運の育成政策をとったため,現在の海運の発展の基礎がかたまった。日本においても海上交通の歴史は古い。古代における大陸との文化の交流は,すべて海上交通に依存しなければならなかったし,北九州と大和の交流には瀬戸内海航路が重要な役割を果たした。中世における国内貨物の輸送はおもに水上交通に依存していた。主要河港間に穀類その他の農産物や木材の輸送がおこり,沿岸航路も開かれた。当時瀬戸内海・淀川・琵琶湖・敦賀・津などは,西国および北陸から京への重要な交通路で,その大部分は水路であった。室町時代には交易を目的とする大陸との交通が行われ,豊臣秀吉のころには,海外に雄飛する日本人の南方海上交通が盛んになったが,鎖国により海外交通は著しく後退した。江戸時代には沿岸交通や河川交通が充実し,米・薪炭・海産物・酒類などの日用品を輸送するための菱垣回船・樽回船・北前船などが発達した。
【世界の海運の現状】19世紀初頭には船体が木から鉄へ変わり,1873年には鋼船が出現した。1910年にはディーゼル機関が船に採用され,燃料が石炭から重油へと移った。今後は原子力の利用も盛んになろう。油槽船(タンカー)がつくられたのは1886年であるが,石油需要の増大に応じてタンカーが大型化し,鉄鋼業の発達により鉄鉱石専用船が出現した。これら産業用輸送船は,荷主であり輸送の需要者自身である企業が,所有または長期の用船をする傾向が生じてきた。近年における商船の大型化の傾向はとくにタンカーにおいて著しく,商船のなかでタンカーの占める比率もきわめて高いものになっている。タンカーの比率(1982)は世界全体で39.29%であるが,リベリア(58.29%)・ノルウェー(53.51%)・イギリス(46.8%)日本(41.58%)などの海運国は,いずれもタンカーの比率が高い。商船の高速化の傾向も著しく,速力20ノットを超える貨物船も現れている。タンカーや専用船の大型化がすすむなかで,一般貨物輸送におけるコンテナ輸送の急増も注目すべきである。国際海上コンテナ輸送は,1966年北大西洋航路に就航したのが最初で,その後先進諸国のコンテナ船の建造が急速にすすんだ。海上コンテナ輸送の利点は,貨物そのものを積みかえる必要がなく,戸口から戸口への一貫輸送ができ,荷役時間の大幅な短縮により輸送の迅速化がはかられ,荷づくりが簡素化され,荷いたみが少なくなるなど,はかり知れないものがある。国際輸送に使用されるコンテナは,20フィートコンテナと40フィートコンテナの2種類が共通で,用途別にいくつかの構造があり,ほとんどの貨物がコンテナに積み込まれるようになった。コンテナ船は荷役方式によってリフト=オン=リフト=オフ船とロール=オン=ロール=オフ(RoRo)船に分けられる。前者はコンテナ=ヤードに備えつけのクレーンで,コンテナを船内に積み込み,後者はトレーラーやフォークリフトで船尾からコンテナを船内に運び込む。コンテナ船の大部分はリフト=オン=リフト=オフ船で,このためコンテナ埠頭は各種の荷役機械やコンテナ置き場をはじめ,貨物をコンテナに詰めたり,取り出したりする建物なども必要になり,従来の埠頭に比べ,広い面積と多様な設備が要求される。また,ラッシュ船(LASH)は鉄製の大型はしけ(ライター)ごと船に積み込んで貨物を輸送する方式で,荷役機械の整備されていない場所で利用するのに便利である。コンテナ船が就航しているおもな港と航路をみると,ロッテルダムが世界第1のコンテナ貨物取扱量を誇り,マルセイユ・ルアーブル・アントワープ・ロンドンなどの西ヨーロッパ諸港と,ニューヨークを中心とする北米東海岸諸島とのあいだの航路が最も頻繁である。つづいて横浜・神戸を中心とする日本と西欧,日本と北米西海岸,オーストラリアと西欧・北米間などのコンテナ輸送が盛んである。
【日本の海運の現況】急成長をつづけている日本経済が必要とする物資の大半は海上輸送に依存している。世界の海上荷動き量は35億t(1981)と推定され,日本はその16.3%を占めるといわれる。品目別にトンマイルベースでの対世界比は,鉄鉱石が50.9%,石炭が42.5%,穀物が37.2%,石油15.8%と,いずれも驚異的な高い数値を示している。これは日本経済が,大量の工業原料や燃料を遠隔地に求めるという,必然的な構造によるものであり,それだけに世界の海運業界に対する影響は大きい。このように莫大な海運の輸送需要に対し,日本の保有船舶は世界の9.8%に相当する4,159万tにすぎず,日本の輸出貨物の21.5%,輸入貨物の36.6%を輸送しているだけである。戦後,日本政府は商船隊の育成に力を入れ,財政資金を投入し,利子補給を行い,船主が容易に船舶を建造し,保有するように努力した。1964年を中心とした政府の造船計画と船主の経営基盤の強化とにより,1970年における日本の商船保有トン数は急増した。しかし,近年日本の外航海運は,船員費の高騰などの理由から急速に国際競争力を失い,輸出入貨物における日本船の積取比率が低下している。船員費高騰の結果,日本の海運企業は,その存立を継続するためさまざまな努力をしている。その第1は外国用船の増加であり,第2は仕組船の運航であり,第3はチャーターバックであるといわれている。外国用船は高賃金に対する手っ取り早い対策である。仕組船とは日本の海運企業が長期に用船する目的で日本の造船所の船台を外国船主に斡旋して建造させる船舶をいい,チャーターバックとは,日本船を海外に売却し,発展途上国の低賃金の船員を配乗させ,これを日本企業が用船することをいう。このような状況下においても,コンテナ船などの自動化率の高い船舶や,省エネ船などは,外国用船に依存することなく,海運企業の経営改善に貢献している。省エネ船の登場は,船舶の技術革新を代表するものといわれ,運航や荷役の自動化機器の導入や,機関室に人を配置しないMゼロ船の開発,船型の大型化による輸送費の軽減,燃費効率のよい省エネエンジンの開発など,種々の試みが行われ,大きな効果をあげるようになった。とくに帆走タンカーは帆の操作をコンピュータ化し,機主帆従方式によって定時運航を可能にして内外の注目を集めている。内航海運は,トンキロベースで国内貨物輸送量の約50%を占めるが,このための消費エネルギーはわずか13%程度で,きわめて効率のよい輸送である。とくに石油製品・石炭・鉄鉱・石灰石・セメントなどの重量貨物や,公共事業関連資材などの輸送量が多い。このような特性にもとづいて,近年内航海運の利用促進が,省エネや環境保全の面から見直されている。しかし内航海運の経営基盤は,小規模業者の乱立で著しく不安定であり,政府の施策も外航海運に比ぺて微弱である。ちなみに内航船の事業者数(1981)は,1万677の多くを数えるが,船腹量は1万545隻,381万総トンといわれ,いかに小企業・零細企業が多いかがわかる。内航海運を地域的にみると,京浜・中京・阪神の3大工業地帯相互間にその大部分が集中し,そのほかでは瀬戸内海や北九州に分布する工業港を中心とした臨海工業地区相互間が顕著であり,北海道・東北・日本海沿岸・南海・南九州地方が疎である。
〔参考文献〕佐波宣平『交通概論』1954,有斐閣
有末武夫『日本の交通』1968,古今書院
矢野恒太記念会『日本国勢図会』1984,国勢社
![]()