●オリュンポスの十二神 オリュンポスのじゅうにしん
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古代ギリシアの多神教における主要十二柱の神々。ほかの神々とともにオリュンポス山の頂上,または天空に宮居するといわれる。主神ゼウスを除いて,ほかの神々に対してとくに特権的地位を占めていたわけではなく,多分に便宜的な選別である。一般にゼウス・ヘラ女神・ポセイドン・デメテル女神・ヘスティア女神・アポロン・アルテミス女神・アテナ女神・アプロディテ女神・ヘルメス・アレス・ヘパイストスの男女それぞれ六柱ずつが挙げられるが,のちの時代になるとヘスティアの代わりにディオニュソスが加わり,男女の均衡は破れる。単なる重要さや知名度の点では冥界神プルートス,人間の守護神プロメテウスなども上記十三柱に劣らないが,現実の人間生活の最も基本的実利的職能をつかさどっているという点で上記の神々が選ばれたのであろう。【オリュンポス山】マケドニアとテッサリアの境界に位置し,標高は文献によりかなりの差異があるが,最近(1983)ギリシアで発行されたギリシア地図書によれば,2,917m。岩石をむき出したいくつかの峰をもち,雄大な山容を誇るギリシアの最高峰。この巨大な山塊はピエリア地方の海岸から内陸に及ぶ広大な地域を占め,マケドニア・トラキア方面からギリシアへの侵入を防ぎ,侵入者はテンペの隘路を突破するか,西側のペトラやボルスタナの山路を迂回せねばならなかった。オリュンポス山はほかにもミュシア・ラコニア・エリス・リュキア・キプロスなどギリシア各地にあり,もともとギリシア先住民の「山」「高い山」を意味することばであったとも,侵入したギリシア諸種族が原住地の山名をギリシア各地に伝えたものともいわれる。しかし,神々の宮座としての地位はテッサリアのオリュンポスに占められ,ホメロスは白雲に覆われた山頂の大宮殿で神々が会議や宴会を開いている光景を描いている。
【十二神】ゼウスとヘラ,ヘパイストスとアプロディテは夫婦,ゼウス・ヘラ・ポセイドン・デメテル・ヘスティアはともにクロノスの子供で兄弟姉妹,アポロンとアルテミス,アレスとヘパイストス,ヘルメス・アテナ・アプロディテはともにゼウスの同腹,異腹の子供で兄弟姉妹の関係にある。十二神はもともと他の神々と同様に各地方の土着神であったが,しだいに神話体系のなかに組織化され,一定の職能や地位を明確にしていった。一方,男神は北方より侵入した遊牧的社会の神々で父権制社会を反映し,女神は土着原住民の農耕的社会の神々で母権制社会を反映するという説もあり,ギリシア神話やオリュンポスの十二神は両社会が抗争し妥協しつつ融合していって成立したギリシア社会の反映であると説かれる。
【十二神の職能】ゼウスは父神クロノスの一族を征服した神々の主神,本来は天空を意味し,雷や雨をつかさどる天気神,のちに王権や国家の守護神,山岳地方とくにアルカディアで崇拝が盛んである。ヘラは本来地母神。結婚・婦人の性と生活・出産と育児をつかさどる。アルゴスやサモスの国家守護神。ポセイドンは本来地震と水の神,ついで海神,船舶や航海・運輸や馬をつかさどる。デメテルは大地の実り,とくに穀物生産をひろめた地母神,娘コレとともにエレウシスの秘儀で崇拝される。ヘスティアはカマドとその火を守る神で,すべての家,すべての国家で祀られる。アポロンは予言・病気と医術・音楽や狩猟の神,太陽との結びつきは遅い。デロスやデルフォイが崇拝の中心地。アルテミスは森や丘や野生動物植物の神,処女や子供を孕んだ女性を守る狩猟神。アテナは戦争・知恵・紡織をつかさどる城塞神,水と関係がありアテナイの守護神でもある。アフロディテは女性の美・結婚をつかさどり,小アジアが崇拝の中心地。ヘルメスは起源の古い道祖神,交通通信や商業・市場をつかさどり盗人や死者を導く神でもある。ヘパイストスは本来火山神に由来し,職人や技術や火をつかさどる鍛冶神。アレスは戦場で闘争心を奮い立たせる軍神。ディオニュソスはブドウそのほかの果樹栽培をつかさどるトラキア出身の酒神。豊饒のダイモンたるサチュロスやシレノスを伴い,その祭儀たるオルギアでは信者が仮面を用いたことから,のちにギリシア悲劇や喜劇の仮面劇が成立したといわれる。
〔参考文献〕藤縄謙三『ギリシア神話の世界観』(新潮選書)1971,新潮社
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