●屋内神 おくないしん
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屋内に祀られる神仏。家屋内に神棚を常設して祀られる主要な神々には,大神宮・夷大黒の福神・納戸神・竃神などがある。このほか,母屋の付属施設である便所・井戸・廐・倉などにも,それぞれ便所神・井戸神(水神)・廐神(蒼前様)・倉の神などが祀られている。また,正月や盆には年棚(恵方棚)や精霊棚などの臨時の神棚を設けて,年徳神(正月様)やご先祖(精霊様)をお迎えして祀る。こうした神棚をとくに設けていなくても,家の出入口・イロリ・ニワ(土間)・大黒柱・敷居・雨垂れ落ちなどは家の内と外,あるいは此世と異界の象徴的な境界をなす場所として神聖視されている。こうした場所は民俗儀礼のなかでその重要性が顕在化することが多い。屋内にいかに多くの神々が祀られているかは,正月の門松が大神宮・夷大黒・水神・竃神・倉・廐・台所・便所・井戸・玄関・床の間・大黒柱・座敷など多くの場所に飾られるのを見てもわかるが,12月に神々の年越といって多くの家の神々の日や供物をちがえて年越をする行事からもうかがえる。たとえば,新潟県岩船郡朝日村では,12月5日は夷様,6日は大神宮様,7日は権現様,8日は薬師様,9日は大黒様,10日は金比羅様,12日は山の神様の年越が行われている。
【屋内神の分化と機能】屋内神には家の座敷や板の間の鴨居に棚を吊って小さな木製の祠堂を安置し,伊勢の大麻,鎮守や中央地方の有名な神社のお札を祀った表側の公的な神と,これといった神体をもたずたんに御幣をさしただけで家の暗い裏側にひっそりと祀られている私的な神とがある。大神宮や仏壇を代表とする表側の神は,包括的な祖先神を中核としており,抽象的な神であるが,夷大黒初め竃神・井戸神・納戸神などおもに土間や納戸に祀られている神は多様で具体的な機能をもち,庶民にとって親しみ深い神とされ,神というよりはむしろ精霊的な性格を濃く有しているといえる。表側の神は立派な神名をもつのに対し,裏側の神は土着の家つきの神として普通名詞的な呼び方をされ,しかも普遍的世界を前提としていないため,味方にすればこれほど心強い神はなく,反対に敵にまわすとはげしく崇るなど恐ろしい障礙神ともなる。
屋内神は土間・板の間・座敷と家屋構造が分化,発展するにつれ,次々と新しい神々が祀られるようになっていった。表側の神はこうして新しく導入された神が多いが,一方土間に祀られる台所の水神や竃神(火の神)は,われわれの先祖が土間で生活していたきわめて古い時代から祀られてきた神といえる。これらの裏側の神は人形状の御幣などを神体としてもつこともあるが,たいていは神官にきってもらった御幣やお札を貼ったり,大竃の上に榊を供えて神がいる場所を表示している。外から迎えてきた表側の外部神は,こうした土着神をとり込むことでより強力に一家の繁栄を保証する神となり,土着の神も外部の神を迎えることによって神威を増してきたといえる。裏側の神は家つきの土着神が多いため,毎日の生活のなかで親しく祀られ多様な機能をあわせもつ生活神としての性格を濃厚にもつ。たとえば,竃やイロリなど家の火所に祀られる神は,火の神や火伏の神としてのほか,作神や生活全般を司る神として信仰され,稲苗や稲の初穂を供えたり,また赤ん坊や新嫁など家の成員として新たに加入する者を承認したり,さらに旅に出る者を保護したりもする。夷大黒などの福神も,富や金儲けの神だけでなく,作神など生活全般にわたる機能をもつ。夫婦の寝室や穀物・衣類などの物置として使われる納戸にも,安産の神・作神・女の神など多くの機能をもつ納戸神が祀られている。納戸神は屋内神のなかでも土間に祀られる神々とともに重要な裏側の神であるが,家屋の内奥部にはその家やそこに住む者を守護する霊能が込められているという信仰がこの神の背景にあるといわれている。こうした裏側に祀られる神々は,家つきの土着神であるために10月に出雲へ出掛けないで留守神となっているものが多く,またその司祭者もたいていその家の主婦があたるという古い祭祀形態をもっている。
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