●OA オー・エー
AD
オフィス=オートメーション(offce automation)の略。経営管理のための“場”をオフィスとすれば,エレクトロニクスを基礎とした情報の作成・伝達・加工・蓄積・利用のための機器群と訓練された人間が,そこで有機的にシステム化され,経営の目的に応じた情報処理を即時的に行うことをいう。すなわち,従来手作業に頼っていた事務を省力化かつスピード化するもので,人間と情報処理機械の共存するマン・マシン・システムを基盤とする。したがって,それはコンピュータ専門家のような一部の特定の専門家に依存するのではなく,オフィスの全員が情報の処理と利用の当事者になるもので,1950年から用いられてきた初期のOAとはまったく内容を異にしている。
その現代の職場のOA化によってもたらされるニューメディアに,まずビデオテックス(双方向文字図形情報システム・愛称キャプテン)があげられる。これは必要な情報を,さまざまな情報・データを蓄えたコンピュータをもつ情報センターから電話回線を通じてテレビでキャッチするシステムで,テレビ受像機にセンターからの情報を蓄積,変換するアダプターをつけ,電卓に似たキーパッドの文字も数字も操作により情報を選び出すものである。日本では,昭和59年5月に日本電信電話株式会社が,その通信サービスを認可された。「いつでも好きなときに知りたい情報が得られる」というのがキャッチフレーズで,索引コードによって知りたい情報をキーパッドを使ってリクエストすると,ブラウン管にその情報が文字や図形となって映しだされる仕組みになっている。現在,このビデオラックス網は,東京をはじめ大阪・神戸・京都・名古屋とひろがり,近年には全国主要都市に拡大される予定である。利用度は,ニュース・天気予報・ビジネス専門情報などが高く・期待するサービスでは座席の予約や業界要覧などが高率を示している。なお現在,キャプテンの利用は企業が先行しているが,今後一般家庭への普及も予想されている。利用するためには・契約料を加入時に支払い,利用量に応じて「サービス利用通信料」を日本電信電話株式会社に支払う。さらに情報が有料の場合,その情報提供者(IP)に「情報料」を支払う。
つづいてCATV(有線テレビ)やINS(高度情報通信システム)など,ビデオテックスと同じケーブル系ニューメディアの利用も高まっている。
CATV(その略語には,難視聴解消を目的とするコミュニティ・アンテナ・テレビジョンとケーブル・テレビジョンの二つの意味があるが,この場合は後者を重視)は,都市型多目的有線テレビともいわれているように,大都市で多数のチャンネルを利用してさまざまな目的に使うケーブルテレビのことである。郵政省から受ける事業許可は,ICN(インターナショナル・ケーブル・ネットワーク)が昭和58年11月に,東急有線テレビが59年2月に受けているが・ほかにも私鉄・商社・流通業・マスコミ・娯楽会社・ファッション業・不動産業・警備会社などの企業がプランを立てており,ホームショッピング・娯楽情報・ホームバイキング・買い物情報・健康と医療情報の提供など数百近い計画が練られている。
INSは,データ通信・ファクシミリ通信・映像通信など,電話以外の電気通信サービスが重要な役割を果たしている高度情報化社会において,その基盤となるいわば“情報新幹線”である。将来,このINSは職場と家庭の双方で利用され,日本電信電話株式会社の通信処理センターからは,次のサービスが予定されている。まず職場(オフィス)では,[1]企業内情報処理,[2]テレビ会議,[3]各種データ,[4]株価情報,[5]企業診断,[6]情報処理,[7]企業内通信など。家庭では,[1]ファクシミリ新聞,[2]各種予約サービス,[3]ホームショッピング,[4]映像サービス,[5]医療情報サービス,[6]行政サービス,[7]テレコントロールなど。その構想実現のため,日本電信電話株式会社では光ファイバーケーブル伝送技術や超LSI・デジタル技術,衛星通信技術などの技術を積極的に開発しており,昭和59年9月から東京・三鷹市,武蔵野地区で2年半にわたるINSモデル実験が行われている。
このほか,職場のOA化,すなわちニューメディア化は,以上のケーブル系以外にも次のさまざまな分野においても互いにからみ合いながら進展していくものと考えられる。すなわち,手書き系−電子郵便(高速ファクシミリで送信してハードコピーを配達)。印刷系−電子印刷,電子新聞・電波新聞(ファクシミリによる直接家庭伝送新聞)。放送系−AMステレオ放送,音声および文字多重放送,FM多重放送,PCM多重放送,コード・データ放送,直接衛星放送,STV,高品位テレビ放送,緊急警報放送。記録系−電子写真機(小型のビデオカメラと磁気記録装置で画像を遠距離にも送れる)。パッケージ系−オーディオディスク,ビデオディスク,ビデオゲームなど。(なお,空中波のニューメディアやパッケージ・ニューメディアは,ソフトウェアに娯楽性のものが多いため実用性に乏しく画一的に大量生産されているので,OA機器としてはなじみにくい面がある)。
さて職場は,そのようなOA化時代を迎えていま大きく変革し,新しい体制に移り変わろうとしている。
空間的には,これまで机がズラリとならんでいたオフィスに代わってニューメディアの機器がならぶようになる。仕切りや壁は取りのぞかれ,従来の工場のような広いワンフロアーの部屋がしだいに多くなってくる。事務室はコンピュータ化され,異企業間のコンピュータネットワークを形成するVAN(付加価値通信網)化されていく。会議室は本社〜支社間などでテレビ会議ができるようにシステム化されるなど,会社のあらゆるところがニューメディア化されていく。
時間的には,事務の省力化による執務時間の大幅短縮が可能になってくる。1日8時間労働が5時間に変わっても,週休3日になっても,まだ余裕が生まれてくるようになる。在宅勤務を認める企業が増え,業務用にテレビ電話を使い,自宅にいながらテレビ会議に出席し,会社の方針や仕事の処理について話し合うことができるようになる。在宅のまま企業が電送してくる仕事を消化すればいいわけで,満員電車にもまれて通勤してきたサラリーマンの生活は一変することだろう。そして,在宅勤務のひろがりは,女性とくに主婦の職場進出をますますうながすことにもなる。
企業とくに総合商社をはじめデパート,スーパーなど小売業などの流通業の根本的な変革,合理化も予想される。高度情報社会が実現してニューメディアを使ったホームショッピンクなどで物や情報の流通が再編成されると,流通業の存在理由そのものがなくなる恐れがある。したがって,現在,日本の総合商社のほとんどがニューメディア関連の事業計画を進めており,流通の変革を先取りすべく他企業間との連携や国際的なネットワークの導入や連携・展開にも力を入れている。
以上,このようなニューメディアの職場への進出は,われわれの社会・日常生活のあり方まで大きく変えるものであろう。経営の極端なまでの合理化は,大幅な就労人員の削減を招く恐れがある。ニューメディアに無理になじまされることで,拒否反応を起こしたりする人も出てくるかもしれない。テレビ電話で話しても,それはあくまで擬似コミュニケーションにすぎず,利用者は語りつくせない不満やもの足りなさを感じ,実体験との格差を知るようになる。ニューメディアを使ってのコミュニケーションは,業務連絡や報知・伝達・資料展示には有効な働きをするが,人間らしい肌を接したコミュニケーションという点では欲求不満を増大するものであろう。
しかし,今後いずれにせよ職場がニューメディア化の最先端となることはまちがいない。仕事の省力化,スピード化,そして擬似体験が多くなる中で社員間の人間関係を豊かにしながらいかに質の高い職場のシステムづくりができるかがOA化時代を迎えたわれわれ現代人の最大かつ新しい課題となっている。