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●オアシス農業 オアシスのうぎょう

アジア アジア AD 

 オアシスとは,砂漠のなかで水を得られる地域を意味するが,より正確には砂漠で水の得られる地域でその水を積極的に利用して人間が居住できるようにした地域のことである。そして,そこで行われる農業をオアシス農業と呼ぶ。

 さて,このオアシス農業は,雨の少ない砂漠地域で行われる農業であるので,最も重要な問題は,その水をどのようにして得るかの問題である。そこで,いかなる水を利用するかによって,オアシス農業は,およそ三つの形態に分類できる。一つは,泉水を利用するもの。これは得られる水が少なく農業の規模は非常に小さい。しかし,小規模ながらも西アジア各地に点在している。次はカナートと呼ばれる人工地下水路を利用して行うオアシス農業である。このカナートとは山のすそ野に直径3mほどの竪抗を掘って地下水の層に達すると,その地点から20〜30m間隔で山麓にある居住地区にむかってさらに堅坑を掘り,その堅坑の底をなだらかな傾斜をもった横坑でつないで,その横坑を利用して山中の地下水を平地にまで導き,その水を利用して農業を行うのである。このカナートは,その施設に特殊な技術を必要とし,莫大な資本を要することから,大地主制と深いかかわりをもつものである。三つめは河川の水を利用した農業である。この農業は川の上流から河に沿って多くの運河を掘り,運河と運河を無数の支流によってつなぎ,川ぞいの干地で行われる。この形態の農業が最も大規模であり,また一般的である。古代からの農業地域,すなわち,肥沃な三日月地帯として有名なナイル川流域・ティグリス=ユーフラテス川流域,また中央アジアのザラフンヤーン川流域・ハリールード川流域などでは古くからこの形態の農業が行われていた。各田畑に対する灌漑のしかたも複雑であり,最も生産力の高いものである。この形態の農業も,大運河を掘ることに莫大な資本と労働力を必要とすることから,古くから国家的規模で行われ,必ず大きな政治的権力と結びついて行われていた。

 さて,以上のような三つの形態の水の利用のしかたによって行われる農業をオアシス農業と呼ぶのであるが,第1番目の形態のものは非常に小規模で無視してもよい。第2番目の形態の農業は降水量が非常に少なく,また大きな河川のない地域,たとえばイランのザグロス山脈・エルブルズ山脈に沿った地域,概して河川の少ない山脈の小さな扇状地などで行われており,第3の形態のものに比べれば規模は小さく生産力も低い。こうしてみると,オアシス農業とは,一般に考えられているのとは逆にむしろ第3の形態,すなわち,大河川に治った広大な平野で行われる大規模な灌漑農業といってもよいであろう。

 さて,上に述べてきたことから明らかなように,オアシス農業では,一般に土地自体は重要視されない。むしろ水があっての土地であって,水をだれが供給するかが問題となる。ゆえに,西アジアの農業では,一般に農業は,それを構成するものとして,土地・水・種子・土地をたがやす家畜・労働力の五つに分けられる。そして,水の利用にはなはだ資本がかかり,厳しい管理が必要なことから,はじめの二つ,すなわち土地と水を所有するものと,家畜および労働力を提供する農民とは別個になることが一般的であった。すなわち,大地主制が発達したのである。また,国家もさまざまな形態で,この大地主制度に関与してきたのである。この制度によって自給以外の余剰生産物は,ほとんどすべて,地主・国家に吸収せられ,いかなる国家形態をとろうとも農民ははなはだしい貧困の内にあったのである。その状況は今日でも大きく変化してはいない。ただ,最近では,従来の小麦・大麦に加えて商品作物,たとえば綿・砂糖・大根・コーヒーなどがつくられるようにはなってきたが,このことも,ただ農民を資本主義経済体制にまきこんだだけであり,彼らのおかれる状況はあまり変化してはいない。