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●エゴイズム

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 利己主義または自己中心主義のこと。思想史的には,必ずしも否定的な意味ばかりには使われていない。たとえば,スミスやリカードなどの古典経済学者はエゴイズムを経済行為の動因とみなしており,快楽主義(エピクロス・マンデヴィル・ホッブス・エルヴェシウスなど),功利主義(ベンサム・ミルなど),独在論(バークリー・シュティルナーなど)の思想家は,エゴイズムを基盤としてその思想を展開している。しかし,今日,一般的には,エゴイズムは否定的な意味,つまり他人の立場を考えないで自分の利益を優先させる考え方や行動という意味で使用されている。エゴイズムは,人間の自己保存の欲求(本能)に根ざしているが,この欲求は他人の権利や人格を侵害してまでも自己の利益を追求しようとする態度や行動にまで拡大されることが多い。その理由は,人間が高度の言語能力つまり知識と意識をもち,自己保存の範囲が拡大されているからである。知識は,一方では今日の文明を築きあげてきたが,他方では,物質的・精神的欲望を増大させ,エゴイズムを助長してきたのである。

 エゴイズムは人類の歴史とともに古いが,シャカ・キリスト・孔子・老子・ムハンマドなどの偉大な宗教の創始者や思想家たちは,人間の苦悩の原因が,自己への執着・エゴイズムにあること,そしてこのエゴイズムを克服し,神(仏)の愛すなわち慈悲(英知)にかなった心づかいと行動をすることが幸福への道であることを示してきた。また,現代の精神分析学者や人間性心理学者(マスロー・フロム・ロジャーズなど)も人間の基本的欲求である自己実現を妨げているものがエゴイズムにあることを明らかにしている。

 今日,このエゴイズムは,単に個人の問題としてばかりでなく,体制化され,組織・宗教・階級・国家などのエゴイズムとなっている。世界各地の戦争・南北問題・公害などの問題の根源は,個人的・集団的エゴイズムにある。したがって,その克服は,今日の人類的課題といえるだろう。