●漆かき うるしかき
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漆の樹皮に傷をつけて,樹液の漆を採取すること。漆の樹には,雄木と雌木があるが,雄木のほうが良質とされている。採取時期は大体6月上旬から12月上旬までであるが,雨天には行わない。漆かき人は,越前・大和の人が多く,各地へ出稼ぎしていた。採集方法は,地域や時代によって異なるが,日本の代表的な方法として,「コロシガキ」と「イケガキ」がある。コロシガキは,採取した年に樹全体の漆を採り尽くし,採取後,樹を伐採する。イケガキは,樹が枯死しないように,採取する年を隔てる方法である。最近は,ほとんどコロシガキを行う。農家が副業で行う場合は,コロシガキの一種である「ツヅミ(鼓)ガキ」を用いる。この方法は,採取期間を短縮できるが,採漆量は少ない。【採取方法と漆の名称】以下,コロシガキについて述べる。まずはじめに「ヤマタテ(山建・山立)」を行う。採取者一人が,一期間に採取する本数と地域を,漆樹の大小・分布の密度に応じて決める。これを一人山本数または一人山かき本数といい,4等分をして,1日の作業地域(それぞれ一日山・二日山・三日山・四日山と称する)を決め,下刈りも行う。次に「目立(検付ともいう)」を行う。今後の傷の入れ方の基準になるため,枝下の寸法,樹の全体などを見極めて,印の傷をつける必要がある。地上20cmぐらいのところに,水平傷をつけ,この水平傷を基準に上方ヘ,約40cmの間隔で,手が届く範囲内に同様の水平傷をつける。樹周20〜25cmの場合は,一列だけに目立を行い「ヒトハラ(一腹)ガキ」という。樹周40cmぐらいまでの場合は,表裏交互二列に目立を行い「フタハラ(二腹)ガキ」,それ以上の場合は三列につけて「ミハラ(三腹)ガキ」と称する。目立が終われば,五日目ごとに目立に平行した水平傷をその上につける。最下部の目立は,その上下に水平傷を入れる。これらの水平傷を「ヘン(辺)」と呼び,辺をつけることを「ヘンガキ」と称す。ヘンガキは二十数回行い(徐々に辺を長くする),採取される漆を辺漆という。辺ガキの最初6,7回までを「ハツヘン(初辺)」またはハツカキ・ハツカマという。その後,18回ぐらいまでの辺を「サカリ(盛)辺」と呼び,採取時期は盛夏になる。この時の漆を「盛漆」といい,最良の品質である。以後,24回ぐらいまでを「遅(オソ)辺」「終(シマイ)辺」といい,遅漆が採取される。以上,辺はカワハギガマで荒皮を軽く削り,カキガマで深く傷をつけ,分泌する漆をヘラで採集し,漆壺にためる。漆壺は桧の皮製が最良とされるが,一般には朴製が多い。これら辺ガキは9月下旬で終わり,10月中旬まで「裏目ガキ」を行う。目立の真下と辺ガキの最後の辺の真上に,エグリを用いて秋に堅くなった樹皮に溝をつけ,その溝にカキガマで樹周の半分の長さの傷をつけ,「裏目漆」を採る。また,周囲が10cmほどの太い枝に傷をつけることも裏目ガキという。次に,裏目ガキの傷間に,2本の傷(樹周を一周する長さ)をつける。これを「トメ(止・留)ガキ」といい,採れる漆を「トメ漆」という。裏目漆とトメ漆をあわせて秋物・ウラ物と称し,品質は少し劣る。トメガキが終了すると,樹を伐採し枝を1mくらいに切る。太・細枝に区分し20本ずつ束ね,1週間ぐらい池や河川の水に浸す。太枝は約6〜9cm間隔の傷をつけ(枝カキ),枝漆を採る。細枝は,セシメ包丁を使って約5cm間隔に切れ目を入れ,セシメヘラでセシメ漆を絞り採る。
【漆の精製】採取した漆を「生(き)漆」といい,このまま用いると,水分を含むため,乾燥が早過ぎ,光沢も悪いので,使用目的に応じ精製する。「くろめ」は水分を取ることで,天日を利用したり,熱を加えたりする(40〜45度が適温,2〜3時間要する)。「なやし」は漆液を均質にするためにかき混ぜることで,かつては,大きな漆桶に生漆を入れて,長いネリヘラでゆっくり長時間かき混ぜて,くろめとなやしを同時に行っていた。中国では樹に深いV字状の溝を入れ,貝殻や竹筒を挿し込んで採集する。タイも同様に,竹筒を挿し込む方法である。
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