●占い うらない
AD
予兆を判断し,予兆から結果を予測する技術。ただし因果関係の証明できるものは科学に屈し,証明の困難な技術をいう。占いは呪術的な行為であるから,洋の東西・文化程度の高低に関係なく存在するが,原始的な社会ではより多く政治に結びつき,その結果に対する信頼も強いが,文化的な社会では趣味となって遊びの要素が多い。【占いの歴史】ヨーロッパでは,バビロニアにおこったといわれる占星術や,動物の肝蔵などによって占う内臓占いが早くから発達し,また占杖で地下水や鉱脈を探ろうとする占い法,なにげなく本を開いて,まず眼に入った文章を指針にする開典占いがある。キリスト教徒がこれを『聖書』で行う聖書占い・トランプで占うカルタ占いなどが著名。夢占いや茶占いのように,中国の占いは日本にも強い影響を及ぼしている。代表的なものは獣骨や亀甲を使った占いと,筮竹(ぜいちく)と算木を使った占いとである。獣骨は牛の肩胛骨・亀は腹部の甲を主として用い,火で焼いてできたひび割れの様子から吉凶その他を占うもので,これを判断するために専門の役職もおかれていた。筮は陰陽の算木と筮竹の算術的操作にもとづき,その組み合わせによって判断するもので,判断の典拠である『易経』は五経の一つとして古来重んじられてきた。のちには銭などを用いる易占が一般化した。日本でも古代には鹿の骨による占いが基本であったといわれており,太占(ふとまに)と呼ばれた。奈良時代には中国から亀卜(きぼく)の法が伝来し,各地にこの占いを世襲的に伝える者が住んでいたらしい。朝廷でも伊豆・壱岐・対馬の三か国から,20人の占部(うらべ)を集めたことが『延喜式』に記されている。古典にあらわれる占いには,琴占・歌占・水占・夕占(ゆうけ)・辻占・橋占・足占(あうら)・鳥占・石占・投げ占・くじなどがあり,いくつかは現代にも類似のものが伝承されている。
【占いの目的】人はなぜ,どういう必要があって占いのような技術を考え始めたのか。まず,[1]真実の探求である。ものごとの真実を知りたいという欲求は,人間にとって基本的なものである。天然の災害や戦乱のために家を焼かれ食を失ったとき,天体の運行に異変を生じたためではないか,日食や月食が原因ではないかと探求する。病気や死亡の原因・失せ物や盗品の所在・盗人の探求なども占いの目的の一つである。ただその手段がいかにも恣意的であり,偶然に左右されることが多かったために,よりすすんだ科学的な方向にすすんだ。[2]選定・選択 人生のなかで選定・選択を迫られる場面は少なくないし,日常生活のなかでも同様のことが数限りなくある。判断力のある人は自分で自分の方向を決め,周囲の人たちの意見を聞くが,占いに頼る人もある。[3]未来の予測 人はだれも未来を正確に知ることができない。科学は理論的・実証的に未来を予測しようとするが,占いは直感的にとらえようとする。宗教も直感的であるが,占いのほうがより偶然的であり連想的である。実際に知ろうとしていることは,幸不幸・健康・農作の豊凶・天候や災害・金運・結婚運など,世俗的・功利的なものが多い。
【占いの方法】古くは星占い・骨占い・筮竹によるものなどを紹介したが,賽を使うもの・くじによるもの・手相・人相・骨相など専門的な知識や技術を要するものが多く,後世も売卜者がほとんど職業的に行っている。現在行われている占いの方法は“夕焼けがあると翌日は晴れ”というような,知識としての前兆判断から職業的な売卜技術にいたるまで,日常生活に密着して,あらゆる道具を使って行われる。年中行事として定期的に行うもの・人生儀礼の折々に行うもの・日常の行為に伴うものなどがある。占いは伝播の速度が早く,また地方的な特色が一般に希薄である。
〔参考文献〕井之口章次『日本の俗信』1975,弘文堂