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●腕くらべ うでくらべ

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 長編小説。永井荷風作。1916年(大正5)8月〜1917年10月「文明」発表。私家版(1917)があり,その修訂版(1954)が現行全集本文となっている。帝国劇場の幕間で,紳土と芸妓がぶつかりそうになるところから始まるが,紳士は会社員吉岡,芸妓は昔なじみの駒代で,2人の関係は復活することになる。吉岡は別に芸妓力次を世話しており,駒代が人気役者瀬川一糸と情を通じたことを知ると,吉岡は駒代の朋輩菊千代を身請けし,力次も一糸と芸者あがりの君龍の仲を取りもつというぐあいに展開する。駒代は悲しみとくやしさのなかで,折よく尾花家の十吉が亡くなったあとを受け継ぐことができた。新橋芸者を中心に,客と役者と芸妓たちの恋と商売のかけひきを,裏面にまで立ち入って描きあげた花柳小説の傑作で,私家版(筑摩版『現代日本文学全集16』に復刻)にはより濃厚な濡れ場がある。

〔参考文献〕秋庭太郎『考証永井荷風』1966,岩波書店

磯田光一『永井荷風』1979,講談社