●卯月八日 うづきようか
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4月8日に行われる年中行事。この日を釈迦の降誕日として,各寺院ではその誕生を祝して灌仏会が行われる。これは,花御堂と呼ばれる花で飾った小堂を境内に設け,そのなかの浴仏盆という水盤上に釈迦の誕生仏を置き,参詣者が甘茶を柄杓で誕生仏にそそぐという行事である。甘茶をそそぐのは,誕生した釈迦の体に9匹の龍が天から清浄の水を吐きそそいで,産湯をつかわせたという伝説にもとづくものである。近年では,灌仏会は花祭と称され一般に広く行われている。以上が,4月8日の仏教行事ないし仏教的説明であるのだが,日本の4月8日の行事には,こうした仏教的側面だけではとらえられない重要な側面がみられる。まず,卯月八日の行事として注目されるのは,おおぜいで高いところに登ってともに楽しむということである。鹿児島県下甑島では,この日寺参りなどの習慣はなく,講中で山登りを行い,一日楽しく飲食して遊ぶ。徳島県剣山の麓の村では,この日をヤマイサミといい,高いところに登って海の方をみる。岩手県釜石付近では,この日野遊びに出て,子どもたちは戦ごっこの遊びなどをする。また,この日には山に登るだけでなく,山からウツギ・シャクナゲ・ツツジなどの花を摘んで来るという地方も広くみられ,その花を家の周囲に飾ったり,長い竿の先へつけて,庭先や背戸などにたてるということをする地方がある。これを,天道花・高花・夏花(ゲバナ)・八日花・タテ花などといい,近畿から中国・四国地方にかけて分布がみられる。和歌山県では,竹竿の先に花を結えて高く揚げて,これを夏花といい,このほかに家の人の数だけ竹の花筒をたてて卯の花をさす。兵庫県南部では,前の晩に白とよもぎの団子をつくって釈迦に供え,8日には種々の花を束にして長い竿につけて庭先にたて,これを高花といい,お釈迦様にあげるのだという。一方,こうした花を仏前に供えるという地方もある。新潟県刈羽郡では,8日の朝に盛装して付近の山に行き,藤の花をとってきて仏壇に供え,これを藤の花といった。また,卯月年忌と称して花を仏前に供え,その前に水鉢をおいてシキミで水を手向けるという地方もある。兵庫県氷上郡では,新仏のあった家で8日に,盆と同様に他家に縁付いた嫁が墓参りに帰って来て,これを花折始めといっている。このように,4月8日を墓参りの日とする地方も広くみられる。卯月八日とは,高いところから訪れる神あるいは死者の霊を迎え祀る日であり,その依り代として花をたてたり,または物忌みのしるしに特定の花を飾ったということがいえる。また,高花を釈迦に供えるというのは後からつけられた説明であり,この日に迎える神に供えるのが本来であったと考えられる。逆にいえば,外来の灌仏会は,日本在来の卯月八日の行事を基盤として,それと結合することによって,現在みられるような法会となったといえるのである。
最後に卯月八日に迎え祀るものについてであるが,山の神・田の神という農耕との深い関連がみられるのである。この日を山ノ神の来臨する日としている事例として,静岡県菴原郡では,4月8日を朝八日といい山の神の祭があり,これに対して12月8日を晩八日といっている。関東地方の筑波山・赤城山・三峯山などの神社では,この日に例祭が営まれる。福島県の刈田嶺神社では,4月8日の祭には神が奥の宮に帰られ,10月8日の祭には下山式といって,神が里宮に下られるという。また,鹿児島県の喜界島では,この日をソーリとかソーイといい,半日仕事を休んで麦飯を食べる日とされており,このソーリとはサオリであり,サは田の神を示すとされ,すなわち,田の神の降臨する日を意味することばとされている。このほかにも,この日には田畑の仕事をしてはならないとか,虫除けの呪いを唱えるという地方も多く,農耕との関連を示している。つまり,卯月八日は,稲作開始期の重要な折り目にあたり,田の神と山の神の交替期とされ,祖霊あるいは田の神を迎えた日であると考えられている。