●ヴェルサイユ条約 ヴュルサイユじょうやく
ヨーロッパ フランス共和国 AD1919 中華民国
【正式名称など】条約の調印された場所にちなんで,一般的にヴェルサイユ条約またはヴェルサイユ講和条約と呼ばれている。正式な名称は,「同盟及び連合国とドイツ国との平和条約」という。第一次世界大戦で敗れたドイツと連合国とのあいだで,1919年6月28日に,フランスのヴェルサイユ宮殿において調印された講和条約である。【休戦交渉】第一次世界大戦4年目の1918年1月8日,アメリカ大統領ウィルソンは,議会演説のなかで,世界平和に関する十四カ条の原則を提唱した。この原則は,のちのヴェルサイユ条約の内容に方針を示すものとなった。その後,戦況はしだいにドイツ側に不利になっていった。そこで,ドイツ側は講和を締結することを決定し,10月4日アメリカ大統領に斡旋を申し入れた。これにより,アメリカ・ドイツ間で講和の条件をめぐり交渉が行われた。
【ヴェルサイユ軍事会議と休戦】連合国側のイギリス・フランス・アメリカ・イタリアの4国は,10月下旬からヴェルサイユ軍事会議を開き,ドイツの休戦条件などについて協議した。一方,ドイツでは各地で反乱や暴動がおこり,11月9日ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が退位し,共和制が宣言された。11月11日,休戦が成立し,4年4カ月に及ぶ第一次世界大戦が終了した。
【パリ講和会議】1919年1月13日に,フランス・アメリカ・イギリス・イタリア・日本5カ国による第1回打ち合わせ会が開かれ,第4次までの会議をもったのち,18日に第1回総会が開催された。この会議は,従来の講和会議と異なり,連合国側だけで講和条約案を作成するという方法がとられた。会議に参加した主要連合国首脳は,アメリカ(ウィルソン大統領)・イギリス(ロイド=ジョージ首相)・フランス(クレマンソー首相)など当代一流の人物であった。講和に関する主要問題はアメリカ・イギリス・フランス・イタリア・日本5大国の代表各2人から構成された連合国最高会議(10人会議)によって決定されたが,その後日本を除く四頭会議が指導権をとり,さらにアメリカ・イギリス・フランスの三頭会議が強い影響力を行使した。また,大小多くの委員会が設置されて,専門的事項を検討した。こうして,連合国側の一方的な審議にもとづく条約案がつくられて,5月7日にドイツ側に手交され,6月28日にドイツ全権と連合国5大国全権およびその他の同盟,連合国全権の調印が行われた。成立した講和条約は,翌1920年1月10日に発効した。
【条約の内容】この条約は,連合国とドイツとの講和条約を規定するものであると同時に,世界の永久平和の基礎を確立しようとするものである。形式的にみれば,前文・本文・末文から構成され,本文はさらに15編に分けられた。内容は次のとおりである。
第1編国際連盟規約(1〜26条),第2編ドイツの境界(27〜30条),第3編ヨーロッパ政治条項(31〜117条),第4編ドイツ国外におけるドイツの権利および利益(118〜158条),第5編陸軍・海軍および航空条項(159〜213条),第6編俘虜および墳墓(214〜226条),第7編制裁(227〜230条),第8編賠償(231〜247条),第9編財政条項(248〜263条),第10編経済条項(264〜312条),第11編航空(313〜320条),第12編港・水路および鉄道(321〜386条),第13編労働(387〜427条),第14編保障(428〜433条),第15編雑則(434〜440条)。
このほかに,付属書18・付属表3が添付されている。内容のうち,おもなものを取り上げれば次のとおりである。アルザス・ロレーヌをフランスに帰属させ,ザール炭田をフランスに譲渡させる。チェコスロヴァキアおよびポーランドの独立を承認し,ザール川流域は,一時的に国際連盟の管理下に置く。ダンチッヒを自由市とし,また,ドイツの海外領土は,戦勝国が委任統治領として統治する。ドイツの戦争責任を認め,戦争に伴う損害を賠償させることなどが規定された。世界の永久平和を確立するための規定としては,第1編に国際連盟規約,また,第13編に労働者の地位・生活状態改善などのための国際労働規約が置かれた。
【日本に関係する事項】日本は,講和会議に,山東省におけるドイツ権益獲得,太平洋における赤道以北のドイツ領南洋群島の割譲,および人種差別撤廃の3件の要求を出した。山東問題および南洋群島問題に関しては,すでにイギリス・フランス諸国と密約を結んでいた関係もあり,日本の要求が認められ,とくに南洋群島は,委任統治領としてではあるが自国領土の構成部分として施政を行うことが認められた。しかし,人種差別撒廃問題は,オーストラリアなどの反対により全会一致とならず,採択されなかった。
〔参考文献〕鹿島守之助『日本外交史,第12巻,パリ講和会議』鹿島研究所出版会
外務省百年史編纂委員会編『外務省の百年,上巻』原書房
外務省編『日本外交年表竝主要文書,1840〜1945,上』原書房
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