50音順    検 索

●姻戚関係 いんせきかんけい

AD 

 婚姻により生ずる親族関係。その範囲や内容は社会によって著しい差がある。婚姻の当事者,つまり夫妻関係を除き,大別して婚姻当事者個人と配偶者の親族との関係,当事者の親族と配偶者の親族との関係があり,また関係が個人間にとどまるものと集団間にわたるものがある。婚姻は敵対関係にある集団を友好的関係に変えたり,新たな同盟関係をつくり出す手段としてもしばしば利用されるが,血縁と異なり人為的に選択しつくられた関係であるため,摩擦や対立も生じ易い。姻戚関係者にしばしば課せられている,細微にわたる行動様式,表敬関係,冗談関係,回避関係などは,こうした摩擦を最小限に抑える効果をもつと考えられる。たとえば,アフリカに広くみられる夫と妻の兄弟姉妹間の冗談関係と夫と妻の両親間の回避関係は,これまで他所者であった親族の配偶者との緊張を,一方ではわざと悪口をいい合いそれを許すことで,他方では敬意の極致とし相互に回避し合うことで解消しようとするものである。韓国の嫁は,夫の父や兄とは回避関係に近い行動が要求される反面,夫の弟に対しては冗談をいったり,小費銭をやったりすることができる。また,夫の姉妹とは嫁入り当初は小姑対嫁としていじめられたりいびられるが,年がたつにつれて一家の主婦となり小姑たちの母代りとしての立場に立つと,互いに相談し合う関係へと変化するといわれている。

 こうした姻戚間の回避関係のノルムを利用して,台湾のプユマ族では酔って手のつけられないほど暴れている場合,その男の妻の兄弟を連れてくるとたとえ赤ん坊であってもすぐ静かになるという。当事者の親族どうしの関係も,相互に敬意を表し合ったり遠慮し合うものが多い。韓国では,夫と妻の親は相互にサドン関係にあり,両者の家族は親密につきあい相互に協力し合うべきであるとされている。ただし,そこには娘が相手の家で生活していることを念頭においてのつき合いであり体面や遠慮が先行する。したがって,まったく対等というよりは嫁を出した方が何かにつけ下手に出る傾向がある。一方,中国の漢人のあいだでも両者は「親家」として親しくふるまう。その関係は,韓国のサドン関係とほぼ,同様であるが,嫁の父親や兄弟はその婚家で儀礼的に最上の客として遇され,嫁の葬式にさいしてはその死が不当な扱いによるものでなかったことを検分する役割を与えられている。こうした韓国や中国の姻縁関係はその子の代になれば,母方親族つまり外戚との関係として父系血縁関係とは異なった補完的な役割を果たす。たとえば,母の実家は甘えのきく場であるとか,中国では兄弟の分家にさいし母方のオジは公平な立会人としての役割をつとめる。父系血縁集団を欠く日本では,姻縁関係である嫁の実家との関係が第1子の出生とそれに続く贈与慣行を通じて,その家の親戚関係の一部に組み込まれてゆき,外戚といった特別な範疇をつくらない。こうした子を介しての姻戚関係の血親化の現象は,台湾ヤミ族において顕著にみられる。ここでは,夫婦に第1子が生まれるとそれまで姻親だった夫と妻の親族が血親となり,親族名称もその子の名前にその子との関係を示す語を付けて呼ぶ,子供中心称呼(テクノニミー)に切替えられる。社会によっては,イトコ婚を優先して行うことによって,集団間の姻縁関係を恒常的に維持している。これには,二つのタイプがあって,父方,母方を問わない双方交叉イトコ婚(交叉イトコとは異性のキョウダイの子どうしをいう)を行うと図1のように,二集団間でヨメを直接交換する関係が成立する。一方,母方交叉イトコ婚を行う場合には,図2のように3箇以上の集団で女性が集団AからBヘ,BからCヘ,CからAへというように,間接的に交換する関係が成立する。このような婚姻体系をもつ社会では,その構成単位である集団が相互に不可欠な存在として有機的に結びつけられている。

01