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●異類婚姻譚 いるいこんいんたん

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 人間以外のもの,すなわち動物や妖怪や精霊と人間との婚姻を主題とする説話の総称。異類求婚譚ということもある。また,そうした説話のうちでも,民間説話,特に昔話にあらわれたものをさす場合もあり,その範囲は明確ではない。

神婚譚と異類婚姻譚】異類婚姻譚は,人間と人間以外の間の婚姻から子が生まれ,その子が偉大な事業をなしとげ一族の始祖となるものと,両者の婚姻が破局にいたるものとに大別するのが通説であり,前者は始祖型と呼ばれることもある。前者の代表的な例は,三輪山説話とも呼ばれる,『古事記』に見られる例である。ここでは,三輪山の神が男の姿で女のもとに通い,そのあいだに子が生まれたとされ,神と人間のあいだの婚姻を語るということで神婚譚とも呼ばれる。一方,「蛇聟入・苧環型」という昔話は上記の三輪山説話と細部にいたるまできわめて類似しており,系譜上の関連がうかがえるにもかかわらず,男の姿で女のもとに通ってくるのは蛇であるとされ,蛇は人間に殺されてしまい,両者のあいだには子供は生まれないと語られている。このことから,両者の婚姻が破局で終わる異類婚姻譚は,上記のような神婚譚が零落し,かつては神の化身と考えられていた異類が単に恐ろしいだけのものと考えられるようになった結果,生じたのだと考えられている。新潟県の「蛇聟入・苧環型」の1例では,蛇は殺されるが,人間とのあいだにできた子は大力の持主で,五十嵐氏という一族の始祖になったと語られており,上記の三輪山説話と通常の「蛇聟入・苧環型」との中間の様相を示していると考えることができよう。

【異類婚姻譚の諸相】しかしながら,日本の昔話にみられる異類婚姻譚のすべてが上記のように神婚譚からの零落という図式で説明できるわけではない。関敬吾は『日本昔話大成』において,「婚姻・異類聟」および「婚姻・異類女房」として計26の話型をあげているが,それらの内容はかなり多様である。

 まず,「蛇聟入・水乞型」「蛇聟入・苧環型」「猿聟入」「蛙報恩」「蟹報恩」「鴻の卵」などの異類聟(異類の男が人間の女との婚姻を求めるもの)では,異類の妻となったり求婚された女性は,他者の援助を借りて,あるいは自身の才覚によって異類を殺して人間世に無事に帰ってくることに重点を置いて語られており,異類との婚姻が娘にとっては試練の意味を,婚姻の破局が試練の克服の意味をもつことが注意される。また,そのなかでも,「蛙報恩」「蟹報恩」「鴻の卵」では,娘や娘の親に助けられた蛙(蟹)が,娘が異類を殺すのを援助するのであり,動物報恩譚としての性格を認めることができる。しかし,異類聟の昔話のうちでも,「犬聟入」では婚姻は破局にいたるのであるが,人間の女は犬である夫を殺した者に対して仇討ちをすると語られており,ほかの異類聟の昔話とは性格を異にする。昔話では「蚕神と馬」および「蚕由来」という話型名で呼ばれるが,語り物としても語られる,馬娘婚姻譚といわれる一連の説話も,馬と娘のあいだの婚姻は破局に終わるのであるが,天から蚕が下りてくるという,蚕の起源を説く結末になっており,やはり特異な例となっている。

 一方,異類女房(あるいは異類嫁,異類の女が人間の男との婚姻を求めるもの)では,異類は男にとって富をもたらす有益な存在であり,男が異類との約束を破って異類の正体を見てしまったために婚姻が破局で終わるという例が多いのが特徴である。「鶴女房」「魚女房」「蛤女房」などは,そういう例である。しかし,そのなかでも,「狐女房」では,狐と男のあいだにできた子供が特異な才能をもち,長じて阿部晴明という高名な占い師になったと語る例があり,始祖型との関連をうかがわせる例となっている。また,「食わず女房」は関敬吾によれば「逃竄譚」として分類されているが,異類女房と考えられるものであり,異類が男の財産や生命をおびやかす恐ろしい存在として語られる例である。

 このように,異類婚姻譚といっても,その内容は実に多様であり,個々の例に即した考察がむしろ必要であろう。

〔参考文献〕関敬吾『昔話の歴史』1966,至文堂

関敬吾『日本昔話大成』1978,角川書店

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