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●犬卒塔婆 いぬそとうば

アジア 日本 AD 

 Y字形の生木の表面を削って経文を書き,村はずれや川岸・墓場の入口などにたてる塔婆を犬卒塔婆という。これは東北南部から北関東にかけての地域に分布がみられ,とくに利根川下流域には濃密な分布がみられる。これをたてるのは[1]犬が死んだとき,[2]犬が難産で死んだとき,[3]安産祈願のとき,[4]子安講・十九夜講などの講の日などバラエティがある。東北南部では犬が死んだときにたて,動物供養の性格が強い。利根川流域を中心とする北関東では,安産祈願のためという性格が強く,犬供養と呼ばれる行事のときにたてられる。犬と安産祈願の結びつきは戌の日に腹帯をまくなどの習俗にもみられるように,産の軽い犬にあやかるようにという説明がされているが,それだけでなく,犬があの世とこの世の境界を自由に往き来できる動物と考えられていたことにもよろう。またY字形の塔婆については,岡山県や新潟県にみられるマタカリ塔婆などと呼ばれるトムライアゲの塔婆との関連も考えられる。