50音順    検 索

●イデア

AD 

 プラトン哲学の核心をなす術語。原語は「イデア」あるいは「エイドス」。プラトン哲学の訳語としては,ふつう「イデア」が用いられている。「エイドス」は,アリストテレス哲学においては「形相」と訳されるが,プラトン哲学においても「形相」が用いられているときがある。プラトン自身は「イデア」と「エイドス」の両語を,ほぼ同様の意味に用いている。両語とも語源は「イデイン」(“見る”)という動詞,“見られるもの・すがた・かたち”という意味である。プラトンソクラテスが問答において追求していたものを,「まさに〜であるところのもの」といういい方で表している。これが「イデア」とか「エイドス」とか呼ばれるようになった。「勇気」という「イデア」は,「勇気そのもの」を定義付ける形でいい表される。言表を通して知られるもの,知識の対象である。同時に,個々の勇敢な行為に内在して,それぞれを勇気あるものたらしめる,「勇敢さ」というものでもある。のちに「イデア」は,感覚の対象となる個物を離れて,つねにそれ自体単一の相を保ち,生成・消滅することも変化することもない実在であり,思考によってのみとらえられるものとされ,個物は「イデア」を範型とする似像であると考えられるようになる。思考によってとらえられる,定義どおりの「3角形そのもの」は「イデア」であり,紙に描かれた3角形は,イデアの似像である。プラトンが「勇気」「節制」などの倫理的イデアと,「3角形」「等しさ」などの数学的イデアから,どこまで広く(たとえば,「人間」「土」)イデアがあると考えていたかは,明確でない。もろもろのイデアの世界,すなわち実在の世界,知性によってのみとらえられる世界の存在可能根拠・認識可能根拠として,究極的価値すなわち「善そのもの」(善のイデア)が,太陽にも比すべきものとして置かれているのである。