●逸民 いつみん
アジア 中華人民共和国 AD
中国の隠者。高士・処士ともいわれた。『論語』泰伯第8に,〈天下に道がおこなわれていればあらわれ,道がおこなわれていないときは隠者となる〉とある。このように,中国は,君主権の強い専制国家であり,王朝の交替が絶えなかったため,乱世や革命時には,主として読書人(知識人)のなかに,現実の政治や社会を離れ,自己の主義や節操を守って生きるものが現れた。彼らは,自ら耕し,あるいは知人の援助をうけて生活を営み,世俗的な名利を求めようとはせず,人として歩むべき道(道徳)を追求しようとした。しかし,彼らの思想には独善的なものも多く,また老荘思想や仏教とのつながりも大きい。中国の正史には,隠逸・高逸・処士・逸士の伝が設けられており,逸民の存在が中国の思想史・文化史の上に小さくなかったことを物語っている。