●一軒前 いっけんまえ
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一戸前ともいわれる。村落生活において,一人前に承認されている家のこと。あるいは,その家族員のことである。村落社会の正規の成員である家の資格である。すなわち,一人前が人並の個人における能力の基準を意味するものに対して,一軒前は家格基準を示すものであり,一軒前と認められない家の成員は一人前になっても村落生活では完全な権利が認められない。一軒前になって初めて村落生活の一員となる。一軒前の基本的条件としては,家屋敷をもち,村内に居住していることである。ついで,共有財産の利用があげられる。すなわち,生産上の共同慣行としての共有山野・地先漁場・灌漑用水などの用益などで,この権利を株という地方は多く,また,カド(門)とも呼ぶ。宮座のある村では氏神の祭祀への参加も,一種の権利であり義務である。村寄合への参加も一軒前の全戸主が参加し,分家や移住者などの新戸は,出席権を認めない場合が多い。村づとめや村の交際を怠ることは,村八分などの制裁にもつながり,一軒前の資格を奪われるものであった。一軒前の家の長男は,家長になることによって,自動的にこの資格を得た。次・三男は,村内に分家し,独立し,村入りを承認され,一軒前の資格をもった。一般には移住者が一軒前になるには,分家よりかなり厳しい制約を受ける。旧家と呼ばれる家ほど一軒前として早く自立した。奉公人分家はナゴカマド・ケライカマド・被官(ヒカン)などと呼ばれ,一軒前になっても少し低くみられていた。町においては,家持ちが一軒前の町人とされ,店借り・地借りは小前であって一軒前の資格がない。