●イカロス
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ギリシア神話の名工ダイダロスの子。クレタ起源と思われる古いダイダロス伝説には出てこない。初出は古典時代のアイスキュロスである。諸説話を総合すると次のようになる。アテナイのダイダロスは甥のタロスが自分を凌ぐようになったのを嫉んでアクロポリスから突き落としてクレタに逃亡する。クレタではミノス王のために怪物ミノタウロスの住居である迷宮(ラビュリントス)をつくり,王妃に木の雌牛をつくったが,テセウス救出の毛糸玉をアリアドネに与えたことで王の怒りを買い,迷宮に監禁される。ダイダロスは自分と息子イカロスのために羽根と糸とロウで翼をつくり,空中に飛び立った。彼らはシチリアをめざして飛んだが,イカロスは有頂天になって父の忠告を忘れ,高く高く昇っていく。やがて太陽の熱でロウが溶けて翼を失ったイカロスは海に墜落した。そこは“イカロスの海”と呼ばれた。一説にはある島に落ちてイカロス島の名を残したといわれる。いずれにしてもアッティカの地名からダイダロスとイカロスの結びつきが生まれ,ヘレニズム時代に地名説話の形に仕上げられたのであろう。この話は鳥のように空を飛びたいという人類の夢を叶えるものとして好評を博し,さまざまに変化しながら今日に伝えられてきたのである。