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●新井白石 あらいはくせき

アジア 日本 AD1657 江戸時代

 1657〜1725(明暦3〜享保l0)学問領域の広さ,合理的かつ先駆的業績において近世屈指の人文学者。同時に幕政転換期に諸政策実行の中心として活躍した政治家である。江戸の生まれ。名は君美。苦学しつつ精進したが主家に恵まれず土屋家・堀田家を相次いで浪人。儒学の師木下順庵の推挙で甲府藩主徳川綱豊(家宣)の侍講。家宣の将軍継嗣とともに,一体分身と家宣にいわしめた信頼関係を基に後に正徳の治と呼ばれた改革政治を展開。日本史上,学識者が行政にあたる諸例のなかで,白石の理想主義・非妥協的パーソナルが目立ったにせよ,全盛時を過ぎた幕府を踏み止まらせた。内政面では朝幕関係の改善,徳教主義風制度文物の点検,正徳金銀の発行,内政外交にまたがった朝鮮通信使経費の節倹,金銀の海外流出を防ぐための海船互市新令の布告などの諸施策がみられる。その学識は和漢籍・経済論・地誌・言語学,とくに史学史上重要な業績を豊かに残した。以下に主著をあげる。『読史余論』史論。3巻。1712年(正徳2)になる。将軍家宣に行った講義ノートを骨子とする。歴史を発展段階により把握し,独自の時代区分による武家政治史となっている。『藩翰譜』各藩の年譜。13巻。1702年(元禄15)完成。公平な記述に特色。『古史通』史論。4巻。1716年(享保1)なる。宣長の『古事記伝』と並ぶ江戸時代の古代史研究の最高水準とされる。比較研究と史料選択の重要性を論じた方法論である。『西洋紀聞』3巻。日本に潜入したイタリア宣教師シドッチを尋問し,世界地理・キリスト教などを記述。『采覧異言』5巻。1713年(正徳3)の序あり。成立事情は上記に同じ。世界地理書で『西洋紀聞』とともに鎖国下の日本で国際的視野を広げる上で珍重され,写本で普及。『東雅』言語学・文献学。15巻の大著である。『折焚く柴の記』自伝。3巻。1716年(享保1)なる。『福翁自伝』と並ぶ自伝に弱い日本史上の傑作。江戸中期の重要な史料でもある。

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