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●アーミル

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 「能動者」「代行者」を表すアラビア語。思弁神学では〈信仰が要請する行為を遂行するイスラーム教徒〉を表す。歴史用語としては,行政上の「官吏」,とくに「徴税官」を意味する。

 行政用語としてのアーミルの歴史的展開をたどれば,すでにコーランに,専門用語としてではないが,〈喜捨(サダカ)を徴集する者〉(9章60節)の義でみえている。ムハンマドは,イスラーム教徒からの救貧税(ザカート)と非イスラーム教徒からの貢納を徴収するために,イエメン・オマン・バフラインなどに35名のアーミルを派遣したという。正統カリフ時代からウマイヤ朝時代にかけては,徴税を主たる任務とする官吏が広くウンマールと呼ばれたが,州の総督をさすこともあり,アミールとの混用が見られる。アーミルが専ら財政上の官職名をさすようになるのはウマイヤ朝も末期にいたってからであり,ムハンマドが派遣したアーミルのなかには軍事上の任を帯びていた考もあり,また正統カリフ時代においても,ウスマーンのもとで艦隊の司令官がアーミルと呼ばれた例もある。ウマイヤ朝末期に中央集権化が図られ,地方政治において軍事と財政とが分離されるようになると,それまでともに州の総督を表したアミールとアーミルは区別され,軍事を担当するアミールに対して,財政の長として各州の税務長官を特にアーミルと呼ぶようになった。アーミルはこのようなカリフが任命する税務長官ばかりでなく,総督や税務長官が指名する県レベルの徴税官やさらに下級の税務吏に対しても用いられた。これは次のアッバース朝時代にも踏襲された。アッバース朝時代の租税制度において,東方諸州はクーラ→タッスージュ→ルスタークという徴税区に分けられたが,これらの徴税区のアーミルたちは徴税のほかに,農業の促進やかんがい設備の整備やバランスシートの提出などの責を負ったという。また,警察の仕事をするアーミル=マアーウィンや国境地帯を担当するアーミル=マサーリフなど特殊な任務のために任ぜられるアーミルの例もある。

 地方の諸王朝においても,細部の違いはあるものの,アーミルは上記のような意味で広く使われた。またムスリムインドでは,初め統治者としての総督の意で用いられたが,後に地方の徴税官を表すようになった。ムスリム北アフリカ及びスペインにおいては,ウマイヤ朝時代の用法が続き,アーミルは一般行政及び財政を司る総督や官吏を意味した。