●アタルヴァ=ヴェーダ
アジア インド AD
古代インドのリグ・サーマ・ヤジュル=ヴェーダとともに4ヴェーダ本集の一つ。成立年代は紀元前1000〜800年ごろ。神への讃歌や哲学的詩編も含むが,本質的には呪法の言である。古名をアタルヴァ=アンギラスといい,息災増益を祈るアタルヴァン族と,呪詛調伏を司るアンギラス族の呪法を合したものという。治病・息災・長寿・調伏・婦女・和合・国王・バラモンの利益・増益・贖罪などの呪法の歌を含む。この分類の多くは密教を含む後代のインド呪術に用いられていて,影響は大きい。ヴェーダ文献は祭式と密にかかわっているが,当初は,ほかの3ヴェーダを司る祭官たちの祭式が正統とみなされ,アタルヴァ=ヴェーダを司るブラーフマナ(=バラモン)祭官の地位は高くなかった。しかし,呪法の意義を強調しつつ,彼らはついにほかの祭官を抑え,祭式全般を支配するものとなった経緯がある。〔参考文献〕辻直四郎『アタルヴァ=ヴェーダ讃歌』岩波文庫,1979,岩波書店