●アシュアリー
AD873
873〜935 イスラーム神学者。スンナ派神学を代表するアシュアリー派の創始者。その生涯の詳細は不明。バスラで生まれ,のちにバグダードで没す。若いころムータジラ派に属す。この派は8世紀中ごろから10世紀半ばまで栄え,のちに異端とされた合理主義神学の代表であった。40歳のとき,彼は突然ムータジラ派から転向し,伝統主義的立場をとるようになった。当時のイスラーム思想界は,理性偏重の合理主義と,もつぱら『コーラン』とハディースにもとづく極端な保守主義とが対立していた。彼はムータジラ派の武器である理性的思弁を用いて伝統的信条を弁護しながら,この両極を調停しようとしている。たとえば,人間の自由意志説を認めると神の全能を強調するイスラーム正統派の信条に矛盾し,極端な宿命説を認めると悪も神の意志となるから,神が創造された行為の力を“獲得”するのは人間で,その意味で人間は行為に対する責任をもつとする。