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●アジア的共同体 アジアてききょうどうたい

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 近代=市民(ブルジョワ)社会が,商品生産と交換を基礎としてできあがっているのに対し,近代以前のさまざまな構造の諸社会(たとえば,原始的・アジア的・古代的・封建的な諸社会)の基礎となる生産関係は,共同体によって規定されている。しかもこれらの共同体は,原始的共同体に始まり,農耕の発生に伴って農業共同体ヘと発展する。この農業共同体は,時代と地域とによってさまざまの偏差をもつが,基本的な形態としては,次の三つの形態が存在している。それは,アジア的・古典古代的・ゲルマン的の3形態であり,ここに最初に分類されているアジア的形態の農業共同体と,アジア的共同体と呼ぶのである。この共同体は,人類最初の階級社会である、“アジア的生産様式”社会の基底に存在する基礎的細胞であり,その上部構造として究極的には,アジア的専制君主をおいた集権的専制国家を聳立せしめるのである。この共同体は,原始的共同体が,その内部の生産力の上昇によって変容・発展してきたものであり,原始的共同体の本質的属性である血縁的紐帯・平等性・共同性をその内部に色濃く遺しながらも,すでに動産的財貨(生産用具・家畜・奴隷など)に対する私的所有が成立し,さらに宅地・庭畑地などのような不動産的な財貨をもしだいに私的所有(家族単位)の対象とするような発達段階にあった。しかしながら,生産の最も基本的な手段である農耕地は,一般的には未だ私的所有の対象とはなり得ておらず,共同体的・総有的支配下にあったというべき段階であった。しかも共同体の内部に,いったん萌芽しはじめた私的所有関係によって,共同体内に階層の分化がひきおこされ,その結果傑出した支配的有力家族層を析出させ始めていた。また共同体相互のあいだでも,地域的な不均等発展からくる優越せる支配的共同体と,劣弱な隷属的共同体を発生せしめ,このようなアジア的共同体相互の政治的諸関係(支配・従属関係)が成熟していき,究極においてはアジア的専制国家を導き出してくるものとされる。

 しかし,ここで注意すべきことは,「アジア的」という表現であるが,これは必ずしもアジア地域に特定していることを意味してはいない。世界史の上において,アジア地域においてとくに顕著に発現した事例が多かったがために,自ら「アジア的」なる語をもって代表させているにすぎない。この共同体は,世界史上のいずれの地域においても普遍的に存在した可能性が十分に認められるのである。アジア的共同体の本質については,過去において幾多の見解が発表されてきているが,すべての人を納得せしめるような共通の見解には未だ到達していない。この共同体を,階級社会成立以前の原始的社会の構成物とする有力な見解も存在するし,また原始社会から階級社会への過渡的段階に位置するという見解も提示されている。今後も,アジア的生産様式・アジア的専制の問題とも関連して,内外の研究者の議論の対象とされることが多いと考えられる。

〔参考文献〕大塚久雄『共同体の基礎理論』1955,岩波書店

カール=マルクス,手島正毅訳『資本主義的生産様式に先行する諸形態』国民文庫,1963,大月書店

塩沢君夫『アジア的生産様式論』1970,御茶の水書房