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●アザーン

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 イスラームの礼拝の時刻を知らせる肉声による呼びかけで,礼拝のための準備。ユダヤ教のラッパ,仏教やキリスト教の鐘による礼拝の呼びかけにあたる。この呼びかけは,大きなモスクではミナレット(尖塔)の上から,小さなモスクでは建物の入口またはわきから,呼びかけ人ムアッジン(中国語は穆安津)が,アラビア語で大声で叫んでムスリムを集める。イスラーム初期においては,ムアッジンは街路を走りまわって教徒を集めたといわれている。中国=イスラームではアザーンを宣礼・叫拝といい,大鼓などによって礼拝の呼びかけが行われている。ムアッジンのモスクでの仕事は,[1]教徒を呼び集めること,[2]イマームを礼拝に案内すること,[3]礼拝の開始を知らせること,である。礼拝への呼びかけは礼拝の準備にすぎないが,ムアッジンが礼拝の開始を知らせることは礼拝の一部と考えられるようになり,イマームまたはハティーブミンバルにのぼるときにも,ムアッジンが随行することになった。

【アザーンの起源】ヒジュラ後,ムスリムは礼拝を知らせる方法について,さまざまな意見を出した。ユダヤ教のようにラッパ,すなわち角笛で知らせる方法,キリスト教のように鐘で知らせる方法などが提案された。ムハンマドはまず,鐘による方法をとったが,数日後,モスクで祈っているムハンマドのところに1人の人物が現れ,次のようにいった。〈私があなたとターイフの町へいった夜,まどろんでいると,緑色の衣を着て手に鐘をもった男が前を通った。私がその鐘を売ってくれないかと頼むと,彼は鐘をいったい何に使うのかと聞いた。私がその鐘で人々を礼拝に呼び集めたいというと,彼はそれよりもっとよい方法がある。それは“アッラー・アクバル……ラー・イラーハ・イッラッ・ラーフ”と唱えることだ〉と。ムハンマドは,これを聞いて大いに喜び,これまでの慣習にとらわれたり,ユダヤ教やキリスト教の真似をするのではなく,イスラームの礼拝の呼びかけにこの語句を肉声で叫ぶように定めたという。また,美声で知られたビラール=ビン=リダーが,最初のムアッジンに選ばれたともいわれている。

【アザーンの内容】このようにして生まれたアザーンはスンナ(慣行)であり,ムアッジンは人差指を耳の穴に入れ,メッカに向かって次のように唱える。

[1]アッラー・アクバル(アッラーは偉大なり)(4回)

[2]アシュハド・アン・ラー・イラーハ・イッラ・ラーフ(アッラのほかに神はないと証言する)(2回)

[3]アシュハド・アンナ・ムハンマダン・ラスールッ・ラーヒム(ムハンマドはアッラーの使徒であると証言する)(2回)

[4]ハイヤー・アラッ・サラー(いざや礼拝のために来たれ)(2回)

[5]ハイヤー・アラ・ル・ファラー(いざや成功のために来たれ)(2回)

[6]アッラー・アクバル(アッラーは偉大なり)(2回)

[7]ラー・イラーハ・イッラッ・ラーフ(アッラのほかに神はない)(1回)

 なお,早朝の礼拝(ファジル=Fajr)では,[5]と[6]の間に〈アッサラート・ハイルン・ミナン・ナウム〉(礼拝は眠りに勝る)という句を2回加える。また,シーア派のアザーンでは,[5]と[6]のあいだに〈ハイヤ・アラー・ハイリ・アァル〉(いざや善行のために来たれ)という句を2回加え,[7]を2度繰り返して唱える。イスラームでは,神とムスリムが交わる方法は礼拝とされ,1日5回の礼拝やそのほかの礼拝が行われるが,礼拝はアザーンから始まるのである。

〔参考文献〕蒲生礼一『イスラーム』岩波新書,1958,岩波書店