●安愚楽鍋 あぐらなべ
アジア 日本 AD1871 明治時代
仮名垣魯文の戯作。1871〜72年(明治4〜5)誠之堂刊。「牛店雑談」(うしやぞうだん)の角書(つのがき)があるが,牛鍋店に集まるさまざまな客たちが雑談しているありさまを,会話や独白,聞き取りなどを交えて,おもしろく具体的につづった滑稽本仕立ての作品で,江戸後期の戯作者式亭三馬の『浮世風呂』『浮世床』の影響が濃厚である。3編5冊からなる。冒頭の「西洋好の聴取」では〈モシあなたヱ牛は至極高味でごすネ此肉がひらけちやアぽたんや紅葉ハくへやせんこんな清潔なものをなぜいままで喰ハなかつたのでごウせう〉といった調子で始まっており,ぼたん(猪)や紅葉(鹿)と異なる牛肉を食ぺはじめた文明開化の風俗が,「鄙武士(いなかぶし)の独盃」「生文人の会話」「歌妓の坐敷詰」「文盲の無益論」など18章(ほかに「当世牛馬問答」も)にわたって,いきいきと写実的にとらえられている。〔参考文献〕『明治開化文学集(一),明治文学全集1』1967,筑摩書房
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