50音順    検 索

●ILO アイ・エル・オー

AD 

 国際労働機関(International Labour OrGanization )。労働問題・社会保障などを取り扱う専門機関で,国際連盟とともに創設され,現在は国際連合の一機関。

【前史】19世紀末からしだいに力を増していた国際労働運動は,女子深夜業禁止・黄燐マッチ製造禁止・8時間労働制などを国際条約によって確立することを要求していた。事実,ヨーロッパではいくつかの条約が締結されたが,たとえば日本は従業員の健康に有害な黄燐マッチの製造を止めず,それはヨーロッパ市場に流れ込んでいた。文明世界を未曽有の災厄におとしいれた第一次世界大戦は,戦争の最大の被害者である労働者階級の発言権を高め,ロシア革命の成功は資本主義国に譲歩を強いた。戦後世界の平和を維持するためには,社会正義を確立することが必要であり,その社会正義は正義と人道にかなう労働条件を確保することによって,不正・困苦・窮乏を世界から追放することによって達成されると主張された。対独平和条約であるヴェルサイユ条約第13編〈労働〉はILOを創設し,その目的として8時間労働・週休・最低賃金などの原則を確立することをうたった。第1回総会を1919年にワシントンで開いたこの機関の原加盟国は,日本を含む43カ国であった。

【組織】ILOは国際労働機関憲章にもとづいて組織・運用される。意思決定機関である国際労働総会が毎年1回,スイス国ジュネーブで開催されている。各加盟国は総会に政府代表2名・使用者代表1名・労働者代表1名・計4名の代表をおくる。総会はこうして参加した各国代表の3分の2の多数決で,条約・勧告を採択する。政・労・使代表がそれぞれ独立して発言し投票できるこの三者構成原則は,ILOの機関のすべてに及ぶ,特色のある基本原則である。ILOの業務は多数の職員を擁する国際労働事務局(これもまたILOである)によって執行されるが,この業務を総括するのは三者構成の理事会である。常任理事国(10主要工業国)の政府代表理事のほかは政・労・使の各グループによって選出される。日本はILO創立以来の常任理事国であったし,現在も,資本主義国のなかでは米国についで第2位の分担金をうけもつ常任理事国である。理事会は事務局長を選出し,総会の議題を決定し,財政を監督し,各種委員会を設置する。

【条約と勧告】ILOのおもな任務は国際労働基準と呼ばれる条約と勧告の採択・普及にある。総会で採択された条約を各加盟国は1年以内に権限ある機関(日本では国会)に提出する義務を負う。批准した条約については適用状況についての年次報告を提出し,監督をうけるが,批准していない条約については,理事会の指示にしたがって自国の法令の状態,批准をさまたげている理由などを報告する義務しかない。勧告については未批准条約の場合と同一である。ILOは創立以来,159の条約とこれに近い数の勧告を採択してきた。これらは国際労働法典を形成している。これらの条約のうち100以上を批准しているスペイン・フランスから,わずかに7しか批准していない米国までさまざまであるが,37しか批准していない日本は,先進工業国では少ないほうに属する。日本が批准している条約のうち87号(結社の自由・団結権条約,1948年)は,8年ごしの労働運動の末1965年(昭和40)にようやく批准したもので,日本の労使関係に大きな影響を与えた。この条約と同じように,労働運動の側が批准を要求している条約には,労働時間に関するもの,年次有給休暇に関するもの,労使関係・雇用・女子労働者・下請・社会保障・強制労働など数多くのものがあり,これらを一つずつ批准することによって日本の労働法・社会保障の水準を国際水準にまで高めることが期待される。

〔参考文献〕中山和久『ILO条約と日本』1983,岩波書店

バルチコス『国際労働基準とILO』1984,三省堂